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映画『バジーノイズ』風間太樹監督インタビュー

URPRESS 2024 vol.77 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]


音が心情を物語り、言葉となって届く映画に

5月に公開される『バジーノイズ』は、音楽表現にこだわり、
人間関係の機微を丁寧に描いた青春音楽映画。
URの団地、サニーメゾン平塚でもロケが行われました。
ロケ地、そして作品へのこだわりを風間太樹監督にお聞きしました。

風間太樹さんの写真かざま・ひろき
1991年、山形県生まれ。東北芸術工科大学映像学科卒業。AOI Pro.所属。大人気ドラマ「silent」をはじめ、映画、ドラマなど話題作を次々に手がけ、注目を集めている。(撮影:菅野健児)

自然があり生活動線が見える豊かな空間がロケ地の決め手に

映画のロケが行われたURの「サニーメゾン平塚」。オフホワイトやグレーがかった住棟の外装の色合いなど、全体的にモダンな雰囲気であることも撮影地としての選択のポイントだった。

ロケハンしたときに、窓から見える、対岸にある建物の存在感と垣間見える生活感が非常に画(え)になると思いました。また、棟がいくつもあって、その間の通路や自転車置き場などに人の流れがある、空間的な豊かさも感じました。主人公の海野清澄(きよすみ)が集合住宅の管理人ですので、清掃をしたり、1日かけて敷地の中を移動する、動線のイメージもしやすかったです。さらに敷地内の自然が非常に魅力的で、ここで撮影したいと思いました。また、大通りが近くにあったり、ちょっと見渡せば住宅があって景観も良い。俯瞰で見たときに、まちが想像できる、生活動線が見える、景観の統一性があることが映画を作るときに非常に大切だと思っていますので、平塚の団地はぴったりでした。

自分が生まれ育った山形には、集合住宅がほとんどなかったので、22歳で東京に出てきて大きな団地を初めて見たとき、とても興味深く思いました。小説や映画などで描かれる団地に憧れを抱いていましたので。お隣との距離感の近さ、コミュニティーの関係性に、どこかうらやましさを感じていました。

音の表現にこだわり山形の原風景を投影

撮影の合間のひとこま。主人公・清澄を演じる川西拓実さん。

むつき潤さんの原作コミック『バジーノイズ』は出版された当初に読んでいました。シンプルな線で可視化された音楽が心地よく、ふわふわ漂って耳に届く感覚がありました。

映画化に際しては、音に向き合うチャレンジをしました。主人公が作る音楽は、誰かに届けるためのものではなく、あくまで自分のための音楽。暮らしの原風景や日々の願いのようなものが込められています。その音楽が知らず知らずに誰かの心の助けになっていきます。自分の原風景は山形の自然です。山形で感じてきたことを主人公に投影したいと思いました。

それに加えて、音響効果的な環境音や日常音に焦点を当てたいという思いもありました。風の音や波の音が登場人物たちの心情を物語ったり、音楽そのものが、彼らの言葉となって観客に届く映画を目指しました。その点でも、平塚の自然とまちと建物が共存している雰囲気は本当に大切だったと思います。バンド演奏では、ベースの音だけでなく弦の鳴りにもこだわりました。非常に細やかに作ることができて、今の自分が考えられる音の表現はすべてやりきったと思います。

表現の可能性を追究した音と人間関係へのアプローチを

入口としては、ラブストーリー、音楽映画のサクセスストーリーですが、音の表現の可能性と、人間関係の豊かさの表現を懸命に考えて作った映画です。

個々の登場人物の人間関係に対する不安や緊張にアプローチしたいという思いも抱えていました。自分自身と他者の間には、線引きのようなものがあると思います。わかりあえないさみしさや、傷つきたくないために閉じる心。そこに一歩踏み込んで、他者を知ることや他者を受け入れることを丁寧に描きたいと思っていました。その先で「一緒にいる」という選択をするのか、「ひとり」を選ぶのか。そのどちらをも肯定したい思いがありました。

主人公の清澄がひとりで孤独に作っていた音楽が、岸本潮(うしお)に寄り添おうとしたことで変化していく。潮と一緒に歩むことで、だんだんと人との関わりが増えて、音楽そのものも広がっていく。それらの音の変化、こだわった音を、ぜひ映画館で聞いていただきたいと思います。

団地内の公園で撮影をしている写真主人公である清澄は、集合住宅の管理人をしながら、「音楽」だけを生きがいに暮らしていた。
撮影をする川村監督の写真人と関わることを必要とせずにいた清澄の生活に、ある日、彼の音楽に心を震わせた上の部屋に住む潮が関わるようになり、2人の世界が大きく変わっていく。

映画『バジーノイズ』

原作は、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館刊)連載の『バジーノイズ』(むつき潤)。

DTM(デスクトップミュージック)を軸に、注目のクリエイター&キャストが集結して、行き先の見えない若者たちの出会いと、末来を見つける姿を描いた、新時代の音楽物語。川西拓実(JO1)、桜田ひよりをはじめ旬のキャストが、今を生きる若者たちのリアルを体現する。ミュージックコンセプトデザインをYaffleが手がけたことも話題に。

●5月3日(金・祝)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開 配給:ギャガ

映画『バジーノイズ』のイメージ写真

【むつき潤・小学館/「バジーノイズ」製作委員会=写真、妹尾和子=構成】

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