映画『黄金泥棒』が公開されて好評ですが、どのような役ですか。 私が演じた藤根美香子は、平凡であることがコンプレックスの40代の主婦。これといってやりたいこともなく、自分の殻に閉じこもっているため、世界が狭く寂しげな女性です。 日常生活に退屈していた美香子は、偶然行ったデパートの黄金展で数百万円の「金きんのおりん000」に魅了され、魔が差して盗んでしまいます。そこから彼女の運命が展開し、百億円の秀吉の金きん茶ちゃ碗わんを盗もうと計画を立てるのです。「一度きりの人生、私にしかできないことをする」という幼い頃の夢を実現していきます。実際に起きた事件から着想を得ていますが、盗みの計画の素人さがコミカルです。 演じていて難しかったシーンや、印象に残っているところを教えてください。 この映画はコメディですが、スピード感があって、テンションが高いというよりはシュールです。台詞や会話の間合いにはとても神経を使いました。間がほんの1秒、2秒と変わっても、おかしさの伝わり方が違ってきますから。 美香子は金茶碗を盗むという目的を見つけると、どんどん生き生きとしていきます。私は撮影に入るときに少し体重を増やしました。後半からは美香子がはつらつとして魅力的になっていく感じを出したくて、体を絞っていきました。そうすることで肌の質感も変わります。萱野孝幸監督と相談しながら、前半から後半への変化を、段階を踏んで変わっていくように話し合いました。 浮気をした夫(阿諏訪泰義)や、金の会社の社員で美香子と駆け引きをする金城光輝(森崎ウィン)にも、美香子はギャフンと言わせたい。だから、彼女の中でどのような感情がうごめいているのか、いろいろと考えました。監督の描き方には心理状態の伏線もあるので、細かいところを観ていただけたらうれしいです。 美香子の最初の状態を演じるシーンでは、私の経験が役に立ちました。子どもが生まれてからしばらくは、子育てに集中していたので、仕事に対して不安で閉2000万円ぐらいする本物の金製品です。これも実話から着想しています。 でも、コメディなので、気を張らずに観て、クスッと笑っていただきたいです。 仕事を再開して、子育てとの両立はどうされていますか。 両親は福岡県の久留米に住んでいますから、最初は誰にどのように助けてもら 最初の家のソファでのシーンは、だらしなくて無防備な日常の姿が、一瞬でわかるようにしたいと思いました。それで着圧ソックスを履くことを監督に提案しました。監督は、「いいですね! ぜひやりましょう」と面白がってくださいました。 どのような方に観てもらいたいですか。 日常が平凡で退屈と感じている方や、やりたいことをやれなかった方に、美香子の行動を見てスカッとして元気になってもらいたいです。誰でもワクワクドキドキしたい願望がありますが、平凡な毎日だと苦しいこともあるでしょう。泥棒はしてはいけないけれど、美香子の気持ちはわかるって、共感してもらえるとうれしいです。 撮影ではおりん000をはじめ、総額数百億円の本物の金の工芸品の数々を使っています。カメラも照明も、どの角度ならスタッフの姿が映らないかと苦労しました。美香子がバーナーであぶったおりんは、塞感を抱いていました。このままどうなっていくのだろうか、これでいいのかと悶々としていたのです。それが反映されていると思います。気を張らずに観てクスッと笑ってもらいたい小西恵美子=文、青木 登=撮影4UR PRESS vol.85
元のページ ../index.html#5