UR PRESS VOL.84
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 モデルからのスタートですが、俳優になりたいと思ったのはいつですか。 大学生のときです。国語の教師になるつもりで日本大学藝術学部の文芸学科に入学しました。文章を書く授業もありましたが、明らかに僕には合わなかったし、新しい物語を創作したいとも思いませんでした。 学校にはミュージシャンになりたい人など、いろいろな分野を目指している人がいて、「自分も自由にやっていいんだ」と初めて思い、落語研究会に入りました。落語はすでにできている話を、自分なりにやるので性に合っていました。そのとき、人前に出て何かしたいと思ったのです。でも落語では人に勝てそうにない。弟子の期間も長い。一人でやらなきゃいけない。僕は一人だとサボっちゃう(笑)。俳優は若くても売れている人がいるから、いい思いができるかもしれないなと思いました。 俳優になろうと思って、なれるのですから…。 すごいですよね(笑)。今まで続けられているし、仕事をいろいろといただいて、信じられません! テレビはすごい人しか出ないものだと思っていた子どもの頃のことを思い出し、「テレビだぜ、マジかー。すごすぎる!」って、自分で言うのもなんですが、びっくりしています(笑)。 去年は『あんぱん』『愛の、がっこう。』などいくつもテレビドラマに出演したので、インタビューが多くて、「取材されてるぞ、僕」って思っていました(笑)。 大事にしているスタンスは何ですか。 人と同じでも違っても、自分の心に響いたものに素直でいようということ。この瞬間を味わおう、今の状況を楽しもう、感じようと意識しています。 俳優は演じるときに「そこにいる」ことが求められます。セットが組まれて作り込まれた中で、衣装を着て、その役の人がそこに座っている、立っている、しゃべっている。演劇は「今を生きる」ことにとても重点を置いていると思います。とくに舞台はライブですから、その瞬間を熱くしていかないと、お客さんが離れ 理容室を舞台に繰り広げられるアクションコメディ、ドラマ25『俺たちバッドバーバーズ』が好評です。どのような作品ですか。“深夜の、油っこいラーメン”みたいなドラマです(笑)。ぜひ爆音で観てほしい。立川談志さんが「落語は人間の業の肯定だ」と言っています。僕はこの言葉に救 音楽のライブも同じです。高校生のとき、ライブに行って、曲が始まった瞬間にあれほど感動したのに、後で詳細はほとんど思い出せなかった。それがとても寂しくて。でも、そのときに最高だったからいいじゃないかと後で思ったのです。 それが演技にも影響していますか。 撮影の現場は、その日の天気やその場所の雰囲気、美術の感じ、相手役の芝居、演出家の意図など、いろいろな立場の人の思いで作られています。その場での思いつきが作品を豊かにするのだと思うので、自分を解放して、その場の感覚や思いつきを逃さないように心がけています。 デイヴィッド・リンチ*は瞑想を大事にしていました。僕は、彼も彼の作品もすごく好きで。彼が瞑想をするようになって、ずっとイライラしていたのに怒らなくなって、アイデアも豊富になったとYouTubeで話していました。よくわかるなと思いましたが、僕はイライラするし、怒る(笑)。ていくのではないかと。「Moment to Moment」(その瞬間、その瞬間で)という言葉がありますが、まさにそういう感じです。観てくださる方の気持ちをできるだけ深く救いたい小西恵美子=文、菅野健児=撮影*映画監督であり、脚本家、プロデューサー、ミュージシャン、俳優でもある。アメリカ生まれ。4UR PRESS vol.84

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