UR PRESS VOL.83
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 復興について学ぶ学生向けツアーは、今年で3回目。2泊3日の旅は双葉町から始まった。 1日目は、東日本大震災と原子力災害の実相を見学する。まず訪れたのは双葉町にある「東日本大震災・原子力災害伝承館」。当時の映像やデータ、さまざまな証言、写真などに圧倒されながらも、真剣なまなざしで展示の一つひとつに見入る学生たち。 続いて訪れた「震災遺構 浪江町立請戸小学校」では、校舎の内部が完全に破壊され朽ち果てた様子に、巨大津波の恐ろしさを実感した。 参加した学生のなかには、昨年の能登半島地震の震源地に近い富山県出身者や、南海トラフ地震で大きな被害が想定される地域の出身者もいる。「自分自身も含め、14年たって、震災の記憶が薄れていることが気になっている」「将来は災害復興にかかわる仕事がしたい」。さまざまな思いを胸に、この3日間を有意義なものにしたいと意気込んでいた。 最後に訪れたのは、大熊町と双葉町の中間貯蔵施設。ここは大熊町、双葉町にまたがる約1600ヘクタール(東京都渋谷区とほぼ同じ面積)の土地に、福島県内の除染で発生した土壌や廃棄物を、2045年の県外最終処分までの間、貯蔵する施設。たくさんの地元の方が「福島のためなら」と提供した土地に造られた。 ここは帰還困難区域に指定され、見学会に参加しなければ入ることはできない。そのなかに介護施設の建物が残っていた。慌ただしく避難した事務所、放置された車。ここの時計は14年前に止まったままだ。「介護施設に向かうこの道は、手入れをしないので松の木が増え、今では草ぼうぼうですが、以前は四季折々武田ちよこ=文、菅野健児=撮影被害を学ぶ一日キモチ、あつまるプロジェクトURが主催する「キモチ、あつまるプロジェクト」が今年も8月27日~29日に開催され、15名の学生たちが福島県の浜通りを訪れた。復興の今を見て、聞いて、感じる旅は、参加者たちの心に強い印象を残したようだ。事故の経緯や県民の対応、災害の影響など、コーナーごとに分かれて展示されている。語り部の講話もある。下・左/線量計で、除染土の上の放射線量を計る。福島第一原発を取り囲むように広がる中間貯蔵施設。ここで原発から約1.2キロだ。右/14年前から時間が止まっている介護施設の事務所と、放置されタイヤの空気が抜けた車。東日本大震災は学生たちが小学生のときに起きた。請戸小学校の児童たちが全員無事だったことにほっとする。東日本大震災・原子力災害伝承館中間貯蔵施設福島でまた会おうよ!1日目震災遺構 浪江町立請戸小学校21UR PRESS vol.83

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