養う。社会に役立つことを実感することで、学生は成長します」 それが可能なのは、学生の提案を自治会の方が真摯に受け止めて、調査・研究に協力してくれる信頼関係あってこそとも語る。 芝浦工業大学と共にまちづくりに取り組むURの森村直子は「作山先生たちは早くから、多様な人々が豊かに暮らすウェルビーイングなまちづくりを掲げ、いろいろな方と連携して活動されています。それぞれの個性を発揮できる温かい雰囲気が魅力で、学生さんもピザの焼き方を後輩に伝授したり、卒業生がイベントに顔を出してくれたりしています」と話す。 昨年からはさらに拠点を拡大。地域の方々の意見を取り入れた計画をもとに、学生がラボの2階をDIYで改修し、多世代が気軽に立ち寄り、多様な過ごし方ができる秘密基地のような場を整えた。 大切にしているのは「わくわく・どきどき感」。ディテールにこだわることが小さな幸せや健康につながると考え、ペンキの色や壁紙にも気を配った。ここでは、地域の方による英語に親しむ会や学習支援なども行われている。また、ここで太鼓の演奏をした折には音への配慮を考え、すぐに環境を専門とする学内の他研究室と組いている要因だろう。 今後は高齢者も楽しめるシルバーeスポーツを取り入れ活動量を計測予定。また学生のアイデアを受けて、多世代が共に楽しめるマリオカートを4台揃えてのゲーム大会も開催する。住民の高齢化が進むなか、「孤立化の予防になる居場所になれば」という関係者の願いが集まる場での今後の展開に期待が高まる。的について次のように説明する。「団地は日本の縮図。団地の課題は、今後の日本の課題でもあります。私どもの大学は、社会に貢献する人材の育成を理念に掲げていまして、原市団地はその実践的教育の場。学生たちは地域の人と触れ合いながら、現場で課題を見つけ、その解決方法を考えます。答えがひとつではないなか、採用される提案をして実践する即戦力をみ、防音カーテンを設置して騒音測定の検証に着手。「石橋を叩く前に渡っちゃえ、と走りながら考えている感じです」 そう語る作山先生の行動力や柔軟な発想も、この活動が11年も続左/ラボの1階。本棚の前のテーブルセットもこだわりのひとつ。下/ラボの2階への階段はウィリアム・モリスの壁紙とフランスのペンキでオシャレに。左下/工具を自由に使える2階のDIYコーナー。上・左上/コミュニティーガーデンでブルーベリーの実を摘む作山教授。ブルーベリーはスムージーにして原市カフェで試飲。左/自治会長の栗田さん。1966(昭和41)年に管理開始した原市団地。外壁塗装や外付けエレベーターの設置などを実施している。上/原市団地では学生たちの微笑ましい光景を見ることが多いと話すURの森村。右/この日は上尾高校から3名の女子高生が原市カフェに参加。体験授業としてお手伝い。多様な世代のためのリアルな居場所づくり12UR PRESS vol.83
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