UR PRESS VOL.82
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演じることに挑戦し続けます石田ひかり俳優さん『ルノワール』は、どのような映画ですか。 11歳の沖田フキが、大人たちの人生に触れ、観察しながら、人間関係は複雑で、生きていくのは悲しいという思いを体感していく物語です。フキは死に対する興味や恐怖、大人の世界への好奇心をもっています。またちょっと友達に意地悪したくなったり、ご近所の家の中を覗きたくなったり、開けてはいけないドアや引き出しを開けてみたりします。見てはいけないと言われると、子どもは見たくなるものです。そういう思い出したくない感情がとてもリアルに描かれた作品で、私は自分の子どもの頃の気持ちを思い出しました。 仕事をしながら一人娘のフキを育てる母親、沖田詩子が私の役です。夫の圭司(リリー・フランキー)は闘病中で、詩子は子育てと介護に追い詰められる日々。余裕がなくなり、家庭も仕事もうまくいかないのを人のせいにし、いつもイライラしていて不機嫌です。 詩子をどのように解釈して、どんな母親を演じようと思いましたか。 撮影に入る前に早川千絵監督と何度かお会いして話をする機会があり、映画では描かれていない、詩子の生い立ちや性 私は『PLAN 75』の初日の初回を映画館に観に行きました。高齢化社会の日本を舞台に、生と死を考えさせられる衝撃的な内容の映画で、とても印象に残っています。 その早川監督の2作目でご一緒できるなんて夢にも思っていなかったので、お話をいただいて、その場で「やりたいでという人物を掘りさげて、肉付けして、立体的にしていくには大事な情報でした。 自分のことを振り返っても、子育て中はとにかく前に進むしかないんですね。映画のなかの詩子は私より抱えているものが重いので、必死に日々を生きていると思って撮影に臨みました。 早川千絵監督の最初の長編作品『PLAN75』(2022年)は、カンヌ国際映画祭で「ある視点部門カメラドール特別賞」を受賞した話題作で、『ルノワール』が2作目です。格、夫との出会いなどを書いた紙をいただきました。これらの背景は映画には一切出てきませんし、撮影のときもその話が出ることはありませんでしたが、詩子子育て中はとにかく前に進むしかないんです小西恵美子=文、菅野健児=撮影スタイリスト:藤井享子、ヘアメイク:山谷友里恵ブラウス・スカート:ロワズィール、ピアス・リング:CASUCA/カスカイストリア 4UR PRESS vol.82

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