涸沼川ではしじみ漁も行われており、この地区には漁業従事者や飲食店もある。皆さんそれぞれの事情を抱えながらも、防災事業が進められている。移転後の跡地利用はまだ白紙だが、URの小松﨑は、「移転した人たちが、移転してよかったと思えるような跡地利用をして、またその場所で皆さんがつながれるようにしたい」と話す。民たちは、「高齢者も多いので、市街地への移転は3年で目途をたてよう」とスピード感をもって事業を進める姿勢を共有している。 関東地方整備局の小平さんは、「これからもスピード感をもって町やURさんと連携して事業を進めていきたい」と話す。 大洗町の木村さんは、「今後も事業を進めるなかでさまざまな課題が出てくるでしょうが、一つひとつに丁寧に対応し、移転した皆さんが、移転してよかったと思えるまちづくりをしていきたい」と締めくくった。んに支援を依頼したのです」と大洗町都市建設課の木村成利さんが説明する。 UR災害対応支援部でこの事業に関わる小松﨑裕輔は、「これまでURが他の事業で培ってきたノウハウをここに展開し、木村さんには、まず地元のキーマンを見つけましょうとアドバイスしました」と話す。 木村さんは、「皆さんとの話し合いの席で、中心になってくださる方はいませんかと聞いていくと、グループのリーダー的な方が出てきました。皆さん、この事業への関心は高く、自分なりに勉強している方もいらっしゃいます。高齢者も多いのですが、3人のリーダー的な方が生まれ、その方たちを中心に丁寧な対話を進めた結果、皆さんの意向が防集事業にまとまっていきました」と振り返る。 住民との話し合いの席では、椅子を円形に置いて、住民同士が顔を見ながら話すスタイルに変えた。っていったのは言うまでもない。 「URさんが、『一緒に悩んで考えましょう』と言ってくれた言葉が忘れられません。事前防災として既成市街地の空き地や空き家を活用した防集事業は、全国初の事例です。誰も経験がない事業計画の大臣同意までの事務的なプロセスにも、URさんの力をお借りしました」と木村さんは言う。 24年6月、大臣同意を得て、防集事業が進み始めた同地区。全72戸のうち、38戸が隣接する市街地の空き地や空き家を利用して移転、残りの34戸は個別に移転する。住「例えば『説明会を開催します』というと町主導になりますが、『説明会が開催されます』といえば、住民が主体になります。このように住民主体のマインドを醸成するためのアドバイスもさせてもらいました」とURの小松﨑。その結果、防災を自分ごととして考えるようになり、住民の意見がまとま上/令和元年の水害をきっかけに、茨城県、水戸市、国と、大洗町(オブザーバー)、URがアドバイザーとして参加して「流域治水ワークショップ」が立ち上がった。河川整備とまちづくりを一体的に進めるための、意見交換や情報共有が目的だ。右/令和元年の浸水状況。茨城県有数の観光地である大洗町。町の木村さんは、「大洗町の人々は、みんな親戚のようなもの。堀割・五反田周辺地区の皆さんも、隣接する市街地への移転なら、違和感なく新しい暮らしが始められると思います」と言う。HINUMAGAWA16UR PRESS vol.82
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