かく説明を尽くしていきました」と振り返る。 17地区のなかで、住民の合意を得て事業が進められ、今年3月に防災集団移転が完了したのが島根県美郷町にある港地区(君きみ谷たに湊みなと)だ。 ここは支流である君谷川が、江の川のバックウォーターで氾濫、川沿いに点在する家屋が何度も浸以外の整備方法を考えなければいけません。加えて、どこの集落も高齢化と人口減少が進んでいるため、集落ごとに最も適した治水の方法を考えていく必要がありました」左・下/地区の5戸がそろって移転し、新しい住まいで新しい暮らしが始まっている君谷湊。「以前よりも各戸の距離が近くなったので、さらに安心です」と住民は言う。右/江の川の中流域から下流域は、山に囲まれた狭窄地を流れていく。地区の集会所の壁には、昭和47年7月の洪水の浸水線が記されていた。ここまで水が上がったのかと驚く高さだ。水被害を受けていた。浸水した5戸は防災集団移転を希望し、集落の高台に土地を造成、ここに移転して新たな暮らしを始めている。 元自治会長の屋野忠弘さんは、「みんな3代前からここに住む知り合いです。この土地 優先して整備を進める緊急特定区間の対象となるのは、平成30年と令和2年の2度の豪雨で家屋が浸水被害を受けた15地区と、それ以前から着手していた2地区を合わせた17地区。治水の方法には、築堤、輪わ中じゅう堤てい、防災集団移転、家屋個別移転、宅地嵩上げがある。それぞれの地区の皆さんの意見や要望を聞きながら、住民の合意を得て方針を決めるのだが、そのプロセスに最も時間を要したという。 中国地方整備局江の川流域治水推進室の江島 悟さんは、「現地に出向き、この方法をとるとこうなります、と住民の皆さんに改修方式を具体的に説明していきました。皆さん、現状のままでは水害の危険があるとわかっていらっしゃるので、総論では賛成、でも各論ではいろいろご意見が出ることもあります。それを伺いながら、とにから離れたくなかったので、同じ地区の高台に5戸まとまって移転できて、本当によかった。今はどんなに雨が降っても、夜、安心して眠れることがうれしい」と話してくれた。 中国地方整備局の江島さんは、「皆さんに安全な所に住んでいただいて、さらに何かあったときに役立つネットワークが形成できる地域になれば」と、この地区の将来像を思い描く。URの重田は、「人口が減少しているこの地区では、コンパクト+ネットワークの考え方で、小さな拠点がつながる仕組みが重要です」と話す。 さまざまな課題を抱える江の川中下流域。その課題を解決し、すべての人が安全な暮らしを手に入れるまで、関係者の挑戦は続く。江の川流域治水推進室にて、右から中国地方整備局の江島さん、河村さんと、URの重田。初の事前防災集団移転安心して眠れるようにGOUNOKAWA14UR PRESS vol.82
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