UR PRESS VOL.82
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ど、おいしくてすぐに食べてしまう」との声多数。 また最近は津波避難タワーの見学など「防災ツーリズム」にも力を入れている。防災と何かを掛け合わせたアイデアが町の職員から出る環境になっているという。 黒潮町とURが津波防災まちづくりを推進するための連携協力協定を締結したのは、2021(令和3)年。「まだまだ足りないことはありますが、やっと被災した後のまちづくりを考えられるステージになったということです。URさんの知見をいただいて、事前復興まちづくり計画づくりのサポートをお願いしています」と村越さん。一方、URの塩間 学は次のように話す。「有事の後のことを考えた安全・安心なまちづくりの計画づくりや、浸水区域にある宅地などの移転のための高規格道路整備の発生土を活用した高台の整備など、URの経験や技術を生かしてお手伝いするための協定です。私どもが黒潮町さんから学ばせていただくことさらに防災で産業を興すべく、食べておいしく備蓄食料にもなる缶詰の製造にも着手。東日本大震災の被災地での「どんなものが食べたかったか」のヒアリングをもとに、地元の食材を中心に開発した缶詰は、多くの人が安心して食べられるように八大アレルゲン不使用。和洋、さらにスイーツも数種類あり、お土産としても人気がある。「保存のために買うのだけれもたくさんあります」 どこに仮設住宅を造るか、災害廃棄物はどこに置くかなどの応急期機能配置計画……。これらが用意されているか否かでは、被災した場合の対応のスピードが大きく違ってくるだろう。「台風や豪雨に襲われる可能性もあります。全職員が防災を担当していますので、組織としての強さはあると思います」と村越さん。組織全体、住民一人ひとりの防災意識の高さ。それが黒潮町の強さであり、魅力だ。 高台に移転した黒潮町の庁舎内には太陽光パネルが設置されている。これは有事の際にも外部電源に頼らずに自分たちで電力を賄えることを目指した「脱炭素」の取り組みのひとつ。「日本一危険なまち」と言われた黒潮町は、いま全国からの視察が絶えない防災の先進地になっている。被災後を見据えた未来につなぐまちづくり日常食(ひじょうしょく)として提案している黒潮町缶詰製作所の缶詰。スイーツを含め15種類以上を展開。ホエールウォッチングや天日塩・カツオのタタキづくりなどに加え、防災研修プログラムも人気がある黒潮町。住民がガイドして、その収入で津波避難タワーの備蓄品を購入するなどの仕組みを整えている。高台にある黒潮町役場。敷地内に太陽光パネルを設置し、「脱炭素の戸別カルテ」の作成にも取り組んでいる。黒潮町の村越さん(右)とURの塩間(左)。「海の恩恵を受けているまちで災害に備えるのは当たり前。このまちに住むための『お作法』だととらえています」と村越さん。KUROSHIO10UR PRESS vol.82

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