UR PRESS VOL.81
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 三谷幸喜さんが翻案し演出する舞台『昭和から騒ぎ』にご出演されますが、三谷さんの印象はいかがですか。 三谷さんの舞台は『大地』(2020年)が初めてで、今回が2作目です。三谷さんの演出は、俳優に任せて、責任を持たせてくださるようなやり方でした。だから自由にできたのですが、一方で、どこか試されているような緊張感もありました。『大地』はメッセージ性が強い作品で、コロナ禍真っ只中での上演ということもあって、あの状況下で、役者である自分に何ができるのだろうか、と考えさせられました。芝居で人の人生を豊かにできることも、人生を変えてしまうこともあります。だからこそ、丁寧に演じて芝居をお客さまに届けていきたいと、あの作品で思いました。『昭和から騒ぎ』は、シチリアが舞台のシェイクスピア作『から騒ぎ』を昭和の鎌倉に置き換え、三谷さんらしい解釈で恋模様が描かれた喜劇です。台詞の応酬が楽しいんです。 僕は恋に落ちて、最初にこの芝居を動かす旅役者の役。男の子が初めて恋をして、周りから何を言われても、盲目的に突進していく様が表現できたらいいなと思っています。恋する相手とすれ違っていく様は、真剣であればあるほど面白いものです。そこをどこまで出していけるのか、僕も真剣に向き合っていきたいと思っています。 本番を重ねながら、変わっていくのが演劇の面白いところでもあります。もちろん、初日から千せんしゅうらく穐楽まで同じように演じていますが、長くやっていて慣れてきたときに、役者それぞれに気づきが生まれて、余計な自意識が削ぎ落とされていきます。常に進化して、役を深めて芝居を充実させていけるのが演劇の楽しいところでもありますね。 どのようにして役を深めていきますか。 まず、演じる人物のプロフィールを書き出します。その人の血液型を考えることも面白いですし、家族構成も大事にしています。一人っ子なのか、一番上、真ん中、末っ子なのかで性格が違ってくる 自信を持てるようになったのは、劇団☆新しん感かん線せんの舞台『修しゅ羅ら天てん魔ま〜髑どくろじょう髏城の七人Season極ごく』です。 それまでは演じることが難しくて、芝居をしていても自分がレベルアップしているのかもわからなかったですし、何も感じとることができず、全く自信が持てなかったんです。せていく作業になります。一方、舞台は稽古期間が長いので、共演者の皆さんがどのようなアプローチで作り上げていくのかをじっくりと拝見することができます。それによって、僕は足し算、引き算をしながら、本番が始まるまで失敗を恐れず、試行錯誤しながら前に進み続けます。 うまくいかなかったという経験も大事だと思っています。今日はテンションが上がりきらなかったなぁ、残念! ということもあります。でも、そういう気持ちを引きずっても1時間ぐらい(笑)。もちろん反省はしますが、悩むことはありません。 落ち込んでいる人に相談されたときは、「失敗して怒られようが、死なない」と話すくらい、僕は怒られることに恐怖を持たないので、演技で何を言われても萎縮しません。次につなげればいいとポジティブに考えています。 転機となった作品は何ですか。ので、そういう掛け算をして役を作っていきます。 映像作品は、自分である程度考えたものを演じて見反省はしますが、悩みません。ポジティブです小西恵美子=文、青木 登=撮影ヘアメイク=oya、スタイリスト=YAMAMOTO TAKASHI(style³)4UR PRESS vol.81

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