人だ。退職を機にウクレレを始め、真本堂で演奏したところ、「私も一緒にやりたい」と声がかかり、今はウクレレとフルート、チェロ、バイオリンの構成に。 「今日、飛び入りで参加してくれたウクレレ以外の方たちは、皆、真本堂で知り合った人たちです。この店は出会いの場。いろいろな方が集まり、知り合いになれるこういう場所が団地にあることが、とてもうれしいですね」と話してくれた。 団地の小さな古書店が、団地を含む地域コミュニティのハブになっている。「例えば畳のある店なら、赤ちゃん連れのお母さんも来やすいですね。学校に行くのが困難な子どもが、ここで1時間でもアルバイトができる店もいい。次はそんな店を考えています」 店主の菅沼さんは、2店目、3店目も団地に出したいと、静かに闘志を燃やしている。ら? 団地の方ですか? という感じで、よく声をかけるんです。そうやって話しかけると、そこから話が広がって、人のつながりが生まれていきます。昔、この団地で子どもを通して交流があった人たちが、数十年ぶりにこの店で再会したということもありました。団地に住んでいて、毎日のように来てくれる方もいますよ」と菅沼さん。 この日のコンサートに出演した志し治じ健一さんは、菅沼さんの大学時代からの友ンタルボックスになっている。 スプリングコンサートをのぞきにいくと、店の中は40人近い人でいっぱいだ。みんなで歌ったり、演奏を聴いたりと、ほのぼのとした空気があふれ、コンサートが終わっても参加者たちのおしゃべりがいつまでも続いている。以前の店からのお客さんもいるそうだが、この店がハブになり、たくさんのつながりが新たに生まれていることがよくわかる。 「私はとにかく来られた方に、どちらかったとき、娘さんがホームページでこの団地の空き店舗を見つけてきた。 「長年、名古屋市内で仕事をしていましたが、この団地に来るのは初めてでした。でも、そのときに案内してくれたURの方が、以前勤めていた学校のPTAの役員さんで、たまたま顔見知りの方だったんですよ。そんなご縁もあり、ちょうど今の店舗が空いたので、2023年12月に、ここに移転して営業を始めました」 真本堂はただの古書店にはおさまらない。この日の午前中は読書会、午後はスプリングコンサート。店の壁のイベントカレンダーには、読書会、朗読会、勉強会、ネイルなどなど、スケジュールがいくつも書き込まれている。入口脇の棚は、手作りアクセサリーなどが販売できるレ上/『三四郎』を読む読書会。まず決められた1話を各自で読み、その後、疑問や感想などを自由に話し合っていく。この日、初めての参加者もいた。コーヒーを味わいながら、『三四郎』をじっくり読む。右/誰にでも気さくに声をかける菅沼さんの人柄にひかれ、自然に人が集まってくる。上/菅沼さんの大学時代からの友人である志治さん。今日はミュージシャンとして参加し、店を盛り上げた。左/名古屋市中川区にある豊成団地。団地に生まれた出会いの場22UR PRESS vol.81
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