UR PRESS VOL.81
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上/輪島市に建設されたプレハブの仮設住宅。左/仮設住宅の完成後に行う「完成検査」。写真は石川モデルと呼ばれる、ふるさと回帰型(木造戸建て風)の仮設住宅での検査。上/敷地に配置図通りに建物が計画されているかを確認する「縄張り検査」。右/URは、写真の内灘町を含め液状化の被害のあった宝達志水町、羽咋市などで、応急仮設住宅の建設支援、被災地危険度判定広域支援を行った。なくない。「皆さん通常業務があるなかでの派遣でしたので、所属部署の方々の理解と協力がなければ対応していくのが不可能でした」と安野は説明する。 9月には豪雨災害もあり、決して順調ではなかったが、地震被災者向けの仮設住宅159団地6882戸が昨年12月に完成し、URの仮設住宅の建設支援は終了。石川県からは、専門職を含め多くの職員を継続して派遣してきたことへのお礼の言葉をいただいた。 さまざまな課題を乗り越えながら、今後、復旧・復興が本格化していく能登半島。日頃、都内の密集市街地整備に携わっている岡本は、復興まちづくりにもURが培ってきた知見や経験が生かせると考えている。「道路や防災機能を備えた公園を整備するなど、まちの基盤づくりという意味では共通点がある。これからが復興のスタートになる。一日でも早い被災地の復興を祈っています」(岡本) 自分たちの経験やノウハウを生かして何ができるかを考えながら、復旧・復興に向けての支援が続く。 仮設住宅の建設は159団地、探しながら現場へ赴くのも一苦労だったと田中はいう。現地では主に、建設した仮設住宅について、建物や屋外まわりが図面通りとなっているかを検査。また、建設予定地の建物配置計画の確認のほか、電気や水道の引き込み、排水などインフラ状況の確認も行った。 その翌週に支援に入った建築職の岡本佳久は、田中同様、東日本大震災などでの復興支援経験があるものの、現地の状況に「言葉が出なかった」という。また、土地勘のない地域のあちこちで、フェーズの異なる作業が進むなか、短期間でしっかり状況を把握し、次の班に引き継いでいくために、どこまで行動すればよいか悩みながら取り組んだとも語る。「けれど、どの現場も『被災して避難されている方たちのために、一刻も早く安心して住める場所を』との思いで頑張っていました。現地の方々の前向きな姿に励まされました」(岡本) さまざまな工法で建てられる仮設住宅が一定の品質を確保できているかを確認すべく、石川県の職員の方々とともに仮設住宅の組み立てが行われている工場に赴いて、製造方法の確認なども行った。 田中と岡本が、支援業務を進める上で重要だったと口を揃えるのが、業務のフローチャートやフェーズに応じたチェックリストがきちんと整備されていたこと。これは地震後すぐに派遣された、大災害の支援経験のあるUR職員と、発災経験のある自治体の応援職員が協力して作成したもので、URが阪神・淡路大震災以降、蓄積してきたノウハウの結集でもある。これがあったからこそ、現場ごとに進捗が異なるなか、人が交替しても着実に、もれなく業務を進められたという。 また、URは建築や土木、電気、機械の専門職員も派遣し続けた。田中をはじめ、電気職や機械職では現地に2回派遣された職員も少ノウハウを結集して支援のシステムを構築16UR PRESS vol.81

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