UR PRESS VOL.81
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かったという。「そういう町民の想いを受けての工事でした。通常はまず基盤整備事業を行い、道路や下水道など地べたを整える工事を終えてから建物の計画を立てますが、今回は同時進行です。途中、コロナ禍もあり、工期通りに完成させるために、毎日が戦いでした」を感慨深げに眺めているのは、大熊町復興事業課の鈴木 修さん。この土地の基盤整備を担当した。 「すごいものができたな、と率直に思います。本来、これだけの規模の開発ですと10年くらいかかるのですが、今回はほぼ半分の期間で完了させなければなりませんでした。そこが大変なところでしたね」と鈴木さんが説明する。 まず用地確保のために、町民のもとを訪れて交渉。県外に避難している方を訪ねると、「町民が帰還するための施設を整備するなら」と快く協力してくれる人が多上/「CREVAおおくま」は木を多用した美しい3階建て。貸事務所にはトヨタやスタートアップ企業などのほか、除染土を保管する中間貯蔵施設の展示室も入居している。左/「CREVAおおくま」の1階ホールは一般の人も利用可能。打ち合わせや休憩に利用したい。 震災前のまちは取り戻せないが、例えば昔の水路を残したり、なじみのある木を植栽したりして、町民が昔のまちを思い出せるようになるものを意識したと教えてくれた。 大野駅西側には社会教育複合施設も計画中で、これらの3施設が完成すると、下野上地区が大熊町の復興の土台となる。オフィスや商業施設に人の動きが見えてきて、「いよいよこれからだな」という思いだと鈴木さん。交流人口や関係人口が増え、この場所からにぎわいを取り戻していくことに期待を寄せている。 URは大熊町から復興再生計画の策定支援を受託、町とともにこれらの土地の基盤整備事業を行ってきた。大野駅西エリアの基盤整備を担当するURの久保咲乃は、入社2年目。最初の赴任地が大熊町で、いきなり復興現場の最前線を担当した。「工期が短いだけでなく、建築や土木など関係する人も多く、それらの調整のために定例会議を呼びかけるのも、日程の調整が大変でした」と振り返る。 設計が固まる前に工事が動き始める状態だったので、急な計画変更も多々あり、対応が難しい場面もあった。 「大変でしたが、さまざまな工事が並行して動く現場を経験したことは、自分のレベルアップにつながったと思います。復興の仕事に携われたことに感謝しています」と久保。「戻ってくる町民の皆さんや、移住してきた方々にとって、ここが住みやすく、交流しやすいまちになることが願いです」と話す二人。大熊町の鈴木さんもURの久保も、すでに次の事業に向けてギアを入れ直していた。「クマSUNテラス」から大野駅方面を眺める。これまでなかったコンビニや飲食店が入り、ここで働く人たちにも喜ばれている「クマSUNテラス」。貴重な体験を次のステップに10UR PRESS vol.81

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