UR PRESS VOL.80
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ずだが、そこは行政が積極的にサポート。市職員の有志らが立ち上げた「おしゃれ田舎プロジェクト」メンバーが起業したい人と大家さんをつなぐなど、仲間づくりもサポートしながら歴史的資源を活かしたまちづくりをもり立ててきた。Rはまちタネ広場に隣接する、明治期に建てられた歴史ある家屋を取得した。「まちが盛り上がっているこの機会に、大手門公園一体の活用に資するよう、まちの活性化の拠点とするための場として取得しました」取得後間もなく、運営事業者を公募し、活用の準備を進めている。この家で生まれ育ち、今は近隣の市で暮らす市川八寿子さんは、家族の思い入れがある家を手放す決意について……。「URさんが市とまちタネ広場を作ってくださって、たくさんの人が集まり、駅や懐古園から大手門へのよい動線になりました。母が高齢になり家の維持も難しくなり、「社会実験を通して自分たちの思い込みが間違っていたことに気づかされました」と話すのは、北国街道沿いで「そば蔵丁子庵」を営む依田利宣さんだ。「URさんが実験結果をデータで示してくれて。懐古園や小諸城大手門まで来ている人が、その先のまちなかには足を運んでいないこと、大手門に来るのは関東の人と思っていたら、実は佐久や上田など近隣の人が多い、といったことが数字で明確になったんです」そこから市と観光局、民間、URの連携による、来訪者にまちなかの回遊を促すにはどうすべきかの話し合いが加速したという。移住者が増えていることも後押しした。「小諸は新幹線が通らなかったこともあり、一時期衰退したまちなんです。市民は落ち込み、開発もされず、古い建物が残っています。我々が古くてどうしようもないと思っていたところを、移住者や若い人たちが、それが魅力的だ、かっこいいと言ってくれて。外の人たちが小諸の価値を見出してくれました」と依田さん。とはいえ、見ず知らずの人に家を貸すのに抵抗のある人も多いはURさんとの出会いがとてもよかったので、家屋も有効活用していただけないかとご相談しました。使えるところは残してくださると聞いて喜んでいます」大手門の隣接地にはカフェもオープンした。こちらは丁子庵の依田さんが、「大手門からまちなかへ人を導くハブになれたら」との思いで旧家を改装して始めた店だ。移住者だけでなく、地元の人からも空き家を再生させる動きが広がっている小諸。まちの財産を生かしながら、未来につなぐための挑戦が続くこのまちで感じたのは、出会った人々の「小諸愛」の深さ。「まちが元気になると、店の売上もあがるんです」。そんな地元の人の言葉も印象に残る探訪だった。       その波に乗るように、昨年、UとURの大岡奏子は説明する。旧家をまちの活性化の拠点にイベントでにぎわう、まちタネ広場。写真は昨年開かれた、「こもろ珈琲セッションポッシブル2024」(上)と「のりものミニイベント」(左)。URが取得した物件。木材業を営んでいた市川さんの先祖が全国から良質な材を集めて建築したこだわりの住宅で、植栽も豊か。上/小諸城の表玄関である大手門。一帯が大手門公園として整備されている。右/大手門に隣接する「CLOVE CAFÉ」。まちなかを散策してもらうことを目的としたワンハンドスイーツを中心に販売。左からURの大岡、そば蔵 丁子庵の依田さん、こもろ観光局の五十嵐さん、市川さん。UR PRESS vol.80

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