みんなご飯食べるし、お風呂に入るし、洗濯する。そういう日常で感じるちょっとした違和感をブツブツ言いたいんです。あるとき新宿を歩きながら、お笑いをやめたらどうなるかなと考えていました。で、ラーメン屋に入ると、その店のメニューが変わってて、「これ、どんなラーメンか、わかるわけないやろ」「どれ食うたらエエねん」と心の中でツッコんで。芸人やめたら、これライブでしゃべられへんのかと思ったんです。僕は細かく考えて、いっぱいツッコんで、モヤモヤした違和感を僕の思考回路で浄化する、それをライブでしゃべりたいんやとわかりました。養成所(NSC吉本総合芸能学院)にと期限を決めていました。3年間ぐらいはコンビ組んだり解散したりして。今の相方の鰻(和弘)と出会う前から、養成所でちっちゃな賞をもらったり、オーディションにも受かっていたので、下積みという感覚はなかったんです。M-1グランプリも優勝(2016年)して、芸人を辞めようと思うことなくきたのは、恵まれていてありがたいです。でも、それがコンプレックスでもあります。これだけ苦労してとか、不遇で日の目を見ない日を過ごしてとかいうストーリーがない。ただお笑い好きやった少年が、ゆっくり1段ずつ階段を上がって行く。それじゃあ誰も興味ないですよね(笑)。恵まれていただけではないと思います。何かなさっていたのでは?僕はめちゃくちゃお笑いが好きやった4UR PRESS vol.79エッセイ集『細かいところが気になりすぎて』が出版されました。原稿を書いて感じたこと、わかったことは何ですか。文章を書く作業は自分の脳内を巡っているものをどう表現するかですから、むずかしかったです。しゃべるのとは別のジャンルだと思いました。これまで雑誌に連載していたものをまとめ、全部の原稿を通しで読んで、僕の細かさを再認識しました。文章でもしゃべりすぎてて(笑)。僕は日常のちっちゃいことがめっちゃ好きで、面白いと思っていて、それを表現したいんだ、ということがくっきり浮かび上がりました。この原稿を書いたおかげで、それが僕の不滅のテーマだとわかりました。入って、芸人をやっていける、続けていこうと思ったのはどういうところですか。何者にもならんかったら、26歳でやめようその違和感で笑わせるたくさん観てきたお笑いが僕の基盤のデータお笑いコンビ「銀シャリ」の橋本直さんは、日常の小さな違和感にツッコミを入れ、その面白さを笑いにつなげる漫才の仕事が、楽しくて仕方ないと話します。脳内を駆け巡る細かすぎることを一冊の本にまとめると、あらためて自分が見えてきました。『細かいところが気になりすぎて』橋本 直著新潮社刊 1,650円(税込)どうしても見つけられないホテルのWi-Fiのパスワード、オシャレすぎて解読不能なカフェのメニュー表、倒した覚えがないのになぜか倒れている飛行機の座席……。どんな些細な出来事も見逃さず、森羅万象にツッコミを入れ続ける全20編のエッセイに、相方・鰻の4コマ漫画も掲載した初の著書。
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