品の舞台になった場所の歴史を勉強すると、背景や意義もわかるので、気づきがあるし、想像も膨らみます。方言の台詞がある仕事では、実際に話されている様子を聞きたいので、なるべくその土地に行くようにしています。その環境に身を置いて、体に方言を馴染ませたいのです。地元の人とコミュニケーションをとればとるほど、役をつかみやすくなりますから。演じるときは想像で補っていきますが、想像では測り知れないのが人間だと思います。頭で考えることから飛び越える瞬間が本能ですよね。人に触れると本能が引き出されることが多い気がして、いかにそれを表現できるかを大事にしています。『光る君へ』の出演にあたっては、史実について調べたり、源氏物語をいくつか読んでみたり、自身が演じる役と縁のある場所に出向いてみたり。あとは雅楽を聴いて、平安時代のリズムを自分なりにつかんでみました。音に関していうと、例えば手を叩くのに、最短距離で叩くのと、曲線を描いて一回まわしてパンと叩くのでは音もニュアンスも違います。それは雅楽を聴いているときに、ウワ〜ンという曲線のような、ふくらみのある音が気づかせてくれました。リハーサルで皆さんの感じが、話し方を含め現代っぽい感じがしたので、逆をいってみようかと、つまり「型」を大切にやってみたら、キャラクターが立つんじゃないかと考えました(笑)。大石静さんの台詞が素晴らしいので、ここは大事と思うときに、間合いを入れながら演じられたらいいなと思っています。普段の生活はどんな感じですか。すぐ怠けます。だらしないですが(笑)、常に楽しいと思えることをやっていたい。ポジティブです。体を動かすことが好きで、アウトドア派。一日中家の中にいたら、鬱■々■としてきます(笑)。休みの日は舞台か映画を観に行くと決めているので、その時間に合わせて、掃除や洗濯などの家事を何時までに終えると予定を組みます。何かしないともったいなくて。団地にはどのような印象がありますか。是枝裕和監督の映画『歩いても歩いても』『海よりもまだ深く』を私は勝手に団地シリーズと呼んでいます。映画を観たときに、団地の生活に温かみを感じ、住んだことがないのに懐かしくて涙が出てきました。舞台『夫婦パラダイス』にも帰る場所の匂いがありますが、私は団地に匂いを感じます。灯りがついている家があれば、カーテンが閉まっていて暗い家もあり、一方では子どもたちが顔を出している。団地は人間臭さを感じるから、ほっとするのだと思います。団地はどの家も造りは似ているけど、一家族、一家族に色があるから、巨大な安心感があります。住まいや生活で大事にしていることは何ですか。こまめに綺麗にすること、空気の入れ替えをすることです。掃除をしながら「ありがと〜」って声をかけます。雑に物を置かないで優しく接したいと思っています。私はあまり物を買い換えず、ひとつのものをずっと大事に使っています。例えば木製のテーブル。使えば使うほど、磨けば磨くほどいい味が出てくるし、傷がついても愛着がわいて可愛いと思えます。生活も仕事も丁寧にしたいと思っています。6UR PRESS vol.78さくおだ作田■■日本文学のレジェンドや名作へのリスペクトを込めたシス・カンパニーの人気シリーズ「日本文学の愛称で親しまれた無シアター」第7弾。織頼派作家・織田作之助の『夫婦善哉』をモチーフに、織田作がこだわり続けた故郷・大阪を舞台に、時空も舞台背景も飛び越えて、新たな人間模様が交錯していく。作:北村想 演出:寺十吾出演:尾上松也/瀧内公美/鈴木浩介/福地桃子/高田聖子/段田安則【東京公演】9月6日〜9月19日(紀伊國屋ホール)【愛知公演】9月22日、23日(穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール)【大阪公演】9月26日、27日(森ノ宮ピロティホール)*いずれも当日券あり。■シス・カンパニー ☎03-5423-5906「UR PRESS」オンライン版で、パソコンやスマートフォンから瀧内公美さんのインタビュー動画がご覧いただけます。(2024年10月末まで)Special InterviewWEB UR PRESSKumi Takiuchi『夫婦パラダイス 〜街の灯はそこに〜』舞台
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