段田さんの舞台での存在感は圧倒的。お立ちになっているだけで観る側の想像力が広がっていきますし、声に厚みがあって言葉の意味が深まります。段田さんに憧れている役者さんはとても多いです。「段田さんを見ていれば不安なことなんてないよ」と、鈴木浩介さんもおっしゃっていたので、私は皆さんから学びながら喰らいついていこうと思います。舞台と映像で演じ方は違いますか?何が違いますか。だいぶ違います。舞台に立つと、目の前のお客さまに届けたい気持ちが強くなりますから、必然的にエネルギー値が上になりながらやりました。幕が開くと、「あれ、アタシ稽古やってきたっけ?」という不思議な感覚になり、舞台と現実との境界線がなくなっていたのです。こうやって舞台をお客さまに生々しくお届けできるのかと実感できて、舞台がさらに好きになりました。稽古はきつかったのに、すぐに舞台に立ちたいと思ったのです。一方、映像は瞬発力を要求されます。私は映画から俳優のキャリアをスタートしました。映画は無声から始まっていますから、言葉ではなく、写真の連続。いい画を作れるかどうかが大事です。舞台は言葉を届けることが大事ですかがります。体も気持ちも、すごく熱いんです。舞台は稽古を積み重ね、お客さんを迎えて演じたときに初めて届くとおっしゃる役者さんが多いのですが、私はその意味が以前はわかっていませんでした。昨年、『夜叉ヶ池』という舞台を演らせていただきました。演出の森新太郎さんは千本ノックのように稽古しますから、フラッフラら、しっかりした体幹が必要です。体の使い方や声の出し方は映像と違います。舞台に立つようになってからヨガとピラティスを始め、体を鍛えています。役者になりたいと思ったきっかけを教えてください。母が映画好きで、小さい頃から家で映画が流れていました。映画を観ている母の顔が、どんどん違う表情になっていくのを見て、映画の力はすごいなあと感じていました。また、中学生のとき、なかにし礼さん原作の『赤い月』という、満州に渡り、第二次大戦下の激動の時代を生き抜いた女性の半生を描いた映画を観に行きました。皆さん迫真の演技で、壊れていく姿が恐ろしかったその役者さんたちが、上映後の舞台挨拶ではとても華やかで。それに驚き、憧れました。あと、高校生のときに観た『プラダを着た悪魔』で、主演のアン・ハサウェイがキラキラ、イキイキとしていてカッコよくて、すっかり魅了されたのも、役者を志すきっかけになりました。役者という仕事の魅力は何ですか。またどのようなことに気をつけていますか。自分の頭の中の想像力を超えていく瞬間が面白いです。また、知らないことを学ぶ機会が増えること、探求できることも魅力です。作たきうち・くみ1989年生まれ。富山県出身。気鋭の映画監督の作品に数多く出演して深い印象を残し、注目を集める。映画『火口のふたり』(荒井晴彦監督)でキネマ旬報主演女優賞を受賞。近年はドラマや映画、舞台など幅広く活躍。今年は大河ドラマ『光る君へ』の源明子役で話題に。演技力の高さでさらなる活躍が期待される。ヘアメイク=董冰、スタイリスト=大石幸平5UR PRESS vol.78
元のページ ../index.html#6