UR PRESS VOL.77
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     一郎さんは、震災後、辛うじて残っていた桜の幹から出ていた若芽を育て、今、女川には700本ほどの桜が植えられていると語り、 「女川1000年後の命を守る会」の伊藤唯さんは、震災の記憶を後世に残す活動について話してくれた。ミュージアムの中庭で行われた植樹式の後、2人の女性に話を伺った。松田由希菜さんは陸前高田市出身で、現在は東京の大学に通う2年生。「本丸公園は子どもの頃から親しんできた場所。その桜が東京に植えられ、それを見た人が東日本大震災を思い出し、震災を自分ごととして考えるきっかけになればうれしい」と目を輝かせた。 7歳の時に被災し、まちが復興していく様子を見てきた松田さんは、まちづくりに興味を持ち、現在は地元陸前高田市のNPOに所属して、岩手県の別の地域のまちづくりや地方創生活動に参加している。陸前高田で震災を語り継ぐ活動も行っており、「語り継ぐことは自分の義務」だと話す。ィストとして活動する神田瑞季さんは、中学校の卒業式の前日に被災。その年の秋、瓦礫処理場の壁に明るい木の絵を描いたことをき女川町出身で絵本作家・アーテっかけに、2019年に「カラーライフプロジェクト」を始めた。「色がなくなったまちに、絵を通して温かな色を届けることで、少しでも人々が明るい気持ちになってくれたら」という思いで、主に木の絵を描き、女川町で個展開催を続けている。 「東京という新しい土地で、この桜が枝を伸ばし、花を咲かせ、新しい物語を紡いでいくことが楽しみです」と神田さん。URの畑は、「この桜は復興支援の発信拠点。いつまでも大切にしていきます」と誓った。専門家によれば、早ければ来年の春には花を咲かせるかもしれないという3本の桜。その開花をたくさんの人が待っている。ここが震災復興の発信拠点になる18UR PRESS vol.77上/女川町の桜を植樹した、左からURの土屋理事、女川町の小林さん、加納さん、伊藤さん、神田さん、URの高原統括役。左/女川町の桜に土をかける。上/「URまちとくらしのミュージアム」の地下では「東日本大震災 被災地とともに−URの復興支援のあゆみ」展を開催。神田さんが描いた桜の絵も展示された。右/今年の3.11にも女川町役場エントランスで桜の絵の展示を行った神田さん。「絵を見たら涙が出てきた」と言われることもあり、何かが届いていると感じている。右/植樹式に合わせてミュージアムの前では、三陸復興マルシェも開催。下/URの畑は式典を終えて「下の世代につなぐ思いは想像以上だった」と話していた。

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