UR PRESS VOL.77
13/36

     「町民の思いを汲んで描いてくれた壁画に感動して、この流れを止めてはいけないと感じました」髙崎さんは「VOICEforFUTABA」の主要メンバーでもある。URの双葉の町民へのヒアリングがきっかけとなって生まれた「VOICEfor FUTABA」は、遠方に避難している人を含め町民の声に耳を傾けて記録に残すプロジェクト。「避難先がバラバラで町民の声が役場に届きにくいことから情報発信の必要性を感じ、髙崎さんたちと相談して一緒に考え、髙崎さんが中心となりプロジェクトを立ち上げました。URは運営支援を担っています。noteに記録した3年分のまちの方の声を、この春、双葉町役場に届ける予定です」と話すURの町井智彦は、双葉町でソフト支援を担当して2年。まちの方の困りごとや、やり方がわからないことのサポートを心がけ、まちのにぎわい醸成や関係人口の拡大に注力している。そして町井が頼りにしているのが、双葉町出身で人脈もあり、町内外の人々をつなぐことができる髙崎さんだ。「まちの相対図をとらえたり、人のマッチングを考えたりするのは得意かもしれません。自分が双葉町出身なので、外から思いをもってやって来る人の傘になって、その人が動きやすい環境をつくれたらとも思っています。地方のまちづくりは、民間ベースのボトムアップでないと難しいのではないでしょうか。その点、URさんが町と町民をうまくつないでくれるのでありがたいです。URの方は皆さん熱量があって、話が早い!」ちの再生でポイントになると考えているのが、町民の満足度を高めることだ。そのように語る髙崎さんが、ま「お客様に満足してもらって、対価をいただくのが飲食店。いかに顧客満足度を高められるかを僕は日々考えています。特に、熱燗コースのペアリングを提案する、うちのようなニッチな店は『あの店はよかったよ』というクチコミが重要。まちの再生では、町民の満足度を上げることが不可欠だと思っています。本気でいいまちだと思う人が増えれば、大切な人に伝え、来訪者も増えるはずです」そして髙崎さんは、新たなローカルカルチャーを双葉町で生み出すべく、この春から自然栽培での野菜づくりに着手する。畑は異なる思いをもった人たちのコミュニケーションの場、プラットフォームになると考えているのだ。自然栽培の野菜のもつ力は、自店での提供で実証済。「口にしたお客様は、おいしいという言葉を超えた、ため息が出るような表情をされるのです」おいしい野菜には世界を変える力があると信じている髙崎さん。仲間と協力しながらローカルカルチャーを生み出し、ローカルビジネスの成功例を双葉から発信したいと静かに燃えている。町民の満足度向上がまちの魅力アップに12UR PRESS vol.77右/当初は賛否両論あった壁画だが、町民の方々の協力で徐々に増えて、今では10カ所以上に。壁画で先行して人が戻ってきたまちの未来を表現しようと、笑顔の絵が増えていった。左/リアルとオンラインを併用して行っている「VOICE for FUTABA」。双葉町に関わる人たちの思いを丁寧に聞き、課題の解決や要望の実現へ向けた検討や活動を進めている。

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る