双葉駅周辺の避難指示が一部解除され始めたのは2020(令和2)年。その後、現地を訪れると、壁画が目に飛び込んできた。力強いタッチと色彩が、静かな空間に浮かび上がっていたのだ。それからは訪ねるたびに壁画が増えていて、撮影ポイントにもなっている。東京の池尻大橋で飲食店「髙崎のおかん」を営む髙崎丈■■さんの思いから生まれたものだ。避難先から久しぶりにふるさと双葉に戻ったとき、時が止まった音のない世界に入り込んだ気がしたという髙崎さん。「このままではまちが止まってしまう、まちに何かが足りていないと感じました」と当時を振り返る。ムステルダムで廃墟になった造船所をアートで蘇らせて観光地にした「エヴァストリートアート」の話だった。アートにはそれだけの力がある、アートで双葉が再生したら美しいのではないかと思って長く立ち入りが禁止されていたこの壁画は双葉町出身で、現在、その後、頭に浮かんだのが、アいたときに、たまたまアート集団OVERALLsの赤澤岳人さんを紹介された。「赤澤さんに、双葉町に絵を描いてもらえませんかとむちゃぶりしたら、いいですよと言われて。赤澤さんたちにはアートでまちが変わるという思いがありました」2020年、最初の壁画は双葉駅東口のすぐ近く、髙崎さんの実家と隣家の境界線として残されていた壁に描かれた。指が示す先には「HEREWEGO!!!」の赤い文字。「さあ行くぞ」という力強いメッセージが描かれたこの絵は、静かなまちに息を吹き込むと共に、髙崎さんの心に火を灯した。壁画でまちが変わる■11UR PRESS vol.77最初に描かれた壁画。まちの再生には、まちのデザイン、ブランディングが重要だと考えている髙崎さん(左)。URの町井(右)は「最近は双葉の町内を歩いていると、住民の方から声をかけられることが増えてうれしいです」と話す。描かれた当初とは変わってきている双葉駅付近の壁画。「OVER ALLsさんは、壁画は壊しても、消してもいい。それは復興が進んでいるということなんだから、という考え方なんです」と髙崎さん。双葉駅の西口で整備が進む公営住宅「えきにし住宅」。基盤整備はURが担当している。福島県双葉町ボトムアップで生み出す新たなローカルカルチャーFUTABA
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