UR PRESS VOL.77
11/36

       撃的な味のキウイに出会い、国産キウイに将来性を感じたとはいえ、除染のために果樹がすべて伐採・抜根されたこの地で新規就農する苦労は想像に難くない。キウイは実がなるまで少なくとも3年の歳月も必要だ。「再生クラブのメンバーと飲みながら話しているときに盛り上がって、僕がやります!と言ってしまったんです」と原口さん。原口さんに誘われた阿部さんが一緒にやる決心をしたのは、まちの人たちから、大熊町はかつて梨やキウイが特産品であり、フルーツ王国であったこと、梨やキウイの実る風景をもう一度見たいという話をたびたび聞いていたから。それに加えて「地域に根付いた農業を産業として確立させていくことに意義を感じたから」だ。特産品と掲げるなら、事業を継続して成り立たせていく必要がある。そのため会社組織にした。「とはいえ、今は新規就農の大変さを実感していますし、収穫までの3年間は収入がなく、皆さんの期待に応える果実が収穫できるのかという不安もあります」生クラブをはじめ大熊町の仲間の存在だ。「何かやろうとしたときに、手助けや応援をしてくれる人が多い」。それも大熊町での就農を決めた大きな要因だという。「URの方々も圃場での作業に協そう語る原口さんの支えは、再力してくれたり、前任だった方が今も関東から毎月週末に足を運んでくれたり、ありがたいです」と阿部さん。URはソフト支援として、このふたりをはじめ地域の力になっているプレイヤーの活動の支援や情報発信を担っている。首都圏の人に知ってもらうため、クラフトビレッジ西小山(15ページ参照)でのキウイイベントなど、プレイヤーに「場所と機会」を提供しながら応援している。大熊町でソフト支援を担当するURの島田優一は入社3年目。同年代の人たちががんばる様子に刺激を受けているという。「地域の外からの交流人口や関係人口をいかに増やすか。これは福島だけでなく、日本の地方都市の課題ですが、チャレンジしたい人を応援する気風のある大熊町には、熱い思いをもった人が集まってきます。そして皆さん仲がいい。原口さんや阿部さんの知り合いや、話を聞いた人が大熊町に足を運んでくれることもよくあります」人が人を呼ぶ――。キウイでつながり、広がる輪はまだまだ大きくなりそうだ。まちに再び果樹が実る風景を10UR PRESS vol.77右から「フルーツガーデン関本」の関本元樹さんと好一さん。極上のキウイを生産するふたりに栽培について教わる阿部さんと、「おおくまキウイ再生クラブ」を立ち上げたURの栗城英雄(左端)。3月9日に開催した(株)ReFruits設立記念の「キウイ農家爆誕祭」で。神主さんによる斎苗(ゆなえ)祭やワークショップも行われ、地域の方々に祝福された時間となった。写真:Dorry 誠JR常磐線・大野駅の西口に商業施設や産業交流施設などを整備中で、2024年度末に「大野駅西交流エリア」の開業が予定されている。URはこのエリアの基盤整備・建築物整備の支援を行っている。画像は完成イメージ図。原口さんと阿部さんがキウイに取り組むきっかけとなった「おおくまキウイ再生クラブ」の第1圃場。昨年秋に初めて地域の方々と収穫祭を行った。春になると葉が出てくる。

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る