距離があることから、この2点の間に位置する古町がウォーカブルなまちになれば、例えば駅から市電でここまで来て、古町を歩き、町屋を使ったカフェで休み、そこから通■町筋のほうへ向かうようなルートができます。このように古町のロジを活用して、エリア全体の魅力や価値を上げることができるのではないかと考えたのです」熊本市都市デザイン課の三浦綾奈さんは、「市としても、古町に低利用地が増えている課題は認識していました。このままでは一町一寺が限られた人だけの利用空間になってしまい、古町のにぎわいが生まれません。ロジ・リンク・シティ構想は、このまちにしかない資源を活用してまちの魅力アップにつなげることができるかもしれない。これはぜひ実験してみようと思いました」と振り返る。昨年11月の「ロジ万博」は、中唐人町から魚屋町2丁目界隈が舞台。広い通りから路地に入ると、左右には大学の研究室がブースを並べ、これまでの研究成果を紹介している。ベンチとテーブルが置かれ、無料休憩所では来場者へのアンケートを実施。そこを上ると広い駐車場。ここは人工芝のシートが敷かれ、子どもたちの遊び場になっていた。周りには骨董品を売る店や、飲食の店も。普段は通り抜けられないロジに人が集まり、ゆるやかな時間が過ぎていた。「初回の実験で、実際に2つの区画のロジを歩いたところ、この近辺に子どもの遊び場がないことがわかりました。そこで駐車場を開放してもらい、子どもたちの遊び場をつくったところ、思いがけずたくさんの子どもたちが来てくれました」とKIMOIRIDONの河野さんが説明する。「企画は4者で話し合い、KIMOIRIDON・市が地元調整、その先の段差にははしごを掛け、熊本大学がデザイン、URが長期的な視点で実現に向けたステップの提案・実証実験での効果検証を担いつつ、お互いに意見交換・作業分担する体制で実証実験を行っています」とURでこの事業を担当する大山祐加子が説明する。熊本市都市デザイン課の木下皓一郎さんは4者の取り組みについて、「KIMOIRIDONの皆さんは古くからここで活動されているので、そこから人の輪がつながっています。このようにそれぞれが得意なところを生かし、ゆるやかに連携している4者の関係はとてもいいですよ」と話す。「歴史を保存するだけではだめですよね。歴史は尊重しつつ、今の価値をのせていって、地元の人たちが、ここに住んでよかったと思えるまちにしたい。古町を、よりよいまちにして次世代に渡したいんです」とKIMOIRIDONのお二人。ここだけに残る「一町一寺」という歴史ある町割りを生かしながら、地域の価値を上げていく試みは、これからも続く。メンバーたちが思い描く未来のまちの姿が、少しずつ見えてきたようだ。■■■■■■■ふだんは入れないロジに人が集まる10UR PRESS vol.76上/この道が、昔から残る一町一寺の中の路地。地元の方の協力を得て、ここに大学の研究室のブースと休憩所などを設けた。左/熊本大学の研究室はブースを出して研究成果を発表。学生と地域の方とで古町地区について意見交換を行った。右/昨年11月の「ロジ万博」。子どもたちの相手をするのは、熊本大学教育学部など教育を学ぶ学生たち。下/「くまもと古町地区実証実験」を進めるメンバーたち。左から、熊本市の木下さんと三浦さん、KIMOIRIDONの早川さんと河野さん。熊本大学の田中教授、URの大山。KIMOIRIDON代表理事を務める早川さんの家業である早川倉庫。明治初期に建てられた元酒蔵の建物で、現在は建物の一部を多目的ホールやワーキングスペースとして活用している。To the next generation KUMAMOTO
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