「古■町■は、加藤清正が熊本城を造る際、最初に町割りをした町人町なんですよ」KIMOIRIDONの早川祐三さんと河野修治さんが、こう言ってわが町を自慢する。ここは熊本城の城下町、「古町」と呼ばれる地区。熊本城の南側に位置し、JR熊本駅とお城の間にはさまれたエリアだ。1607年に熊本城が完成してから400年以上の歴史を刻む古町。その一番の特徴が、「一町一寺」といわれる町割りだ。これは道路で囲われたおよそ120メートル四方の中に、一つの寺と、寺を囲むように町屋を配置して、一つの町としたもの。古町には、この碁盤の目の町割りが、今も残っている。だが、その町の中を見ると、かなり様相が変わっている。古い町屋や寺は熊本地震で倒壊などの被害により減少した。それを機に移転する人が増え、その跡地はマンションや駐車場へと姿を変えた。まちおこし活動をする(一社)「このままでは古町らしさが失われてしまう」と早川さんたちは危機感を抱いていた。一町一寺を現代に生かし、新しいにぎわいを生みだすことができないか。そのための『くまもと古町地区実証実験』が2022年から、熊本市、KIMOIRIDON、熊本大学田中智之研究室、それにこの地域のコーディネート支援をしているURの4者によって始まっている。昨年11月に行われた「ロジ万博」をテーマとした3回目の実証実験の現場を訪ね、関係する皆さんに話を伺った。古町に20年かかわり続けている熊本大学大学院先端科学研究部の田中智之教授が発表したのが「ロジ・リンク・シティ構想」。これは一町一寺の区画の中の細い道、路地=ロジとロジをつないで歩けるようにすることで、人々が集まり、昔のようなコミュニティーのあるまちがつくれるのではないか、という提言だった。「熊本市では、まちの中心部と玄関口である熊本駅との間に一定の■■■■■■9「一■町■一■寺■」の中が駐車場だらけにロジをつなげば新しい価値が生まれるUR PRESS vol.76ロジの間には土地の段差があり、普段はここを通り抜けることはできない。この日ははしごを掛けて、行き来自由に。「初めて通る」と地元の人にも好評だった。古町に残る町屋。人気のカフェもある。この一帯は明治の西南戦争で焼かれたので、町屋はそれ以降に建てられたものが多い。武田ちよこ=文、菅野健児=撮影昨年11月の実証実験「ロジ万博」の会場になったのが、ビルの間の駐車場になっているエリア。かつてはこの中心に寺があり(写真中央左あたり)、町屋が並んでいたが、現在では駐車場とマンションが増えた。KUMAMOTO加藤清正の時代から続く熊本城の城下町で、歴史的なまちの姿を保ちながら、その価値を高める試みが始まっている。中心になるのは行政と一般社団法人、大学とURの4者。ゆるやかに連携しながら、未来のまちの姿を模索する。熊本県熊本市「一町一寺」に新たな魅力を加えこのまちを次の世代に渡したい
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