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「良い本」に出会える書店、荻窪「Title」の店主に聞く春のおすすめ本

JR中央線「荻窪」駅から徒歩10分ほどの場所にある、カフェとギャラリーが併設された書店「Title」。古民家を改築した趣のある書店で、全国各地から足を運ぶ人がいるほどの人気です。この書店のオーナーで、『365日のほん』(河出書房新社)の著者でもある辻山良雄さんに、春の読書にぴったりの本についてうかがいました。

何気ない暮らしの描写が特長の本

Q.春におすすめの本はありますか?

「柴崎友香さんの『春の庭』(文春文庫)という短編集です。タイトルになっている『春の庭』という話は、柴崎さんが芥川賞を受賞した作品でもあります。
主人公の弟が住むアパートに、『西』という名前の女性も入居しているのですが、彼女はアパートの裏に建つ水色の家に、異常なまでの関心を示します。そこから、『西』に巻き込まれるように水色の家と住人に関わるようになっていき…、といったあらすじ。一つの家を舞台に、かつて住んだ人と、今住んでいる人との、二つの時間が重なり合って流れていく物語です。
この作品の魅力は、何気ない描写。例えば人が食事をしている場面でも、柴崎さんが書くとすごくおいしそうに感じられるんです。ちょっとした日常の表現の仕方が上手で、心の動きが丹念かつ自然につづられています。文章で読むからこそ感じられる、小説の楽しみがある作品です。」

Q.小説以外ではどんな本が良いでしょうか?

「飯島都陽子さんの『魔女の12ヵ月』(山と渓谷社)です。魔女と聞くと、おどろおどろしいイメージがあると思います。しかし、この本によると、かつて魔女は人がいる村と山の間に住み、人間の病気を治すこともあるくらいとても身近な存在だったそうです。
この本は、そんな魔女たちに伝わるレシピや手仕事をつづった歳時記。読むと、目に見えない存在を信じられるようになる不思議な1冊です。非常に詳細に描かれているイラストも一緒に楽しんで欲しいですね。」

記事のまとめ

何気ない生活が丹念に描かれている春のおすすめ本は、『春の庭』&『魔女の12ヵ月』

  • ・柴崎友香さんによる短編集『春の庭』(文春文庫)。タイトルになっている『春の庭』は、一つの家を舞台に、かつて住んだ人と、今住んでいる人との、二つの時間が重なり合って流れていく物語
  • ・飯島都陽子さんによる『魔女の12ヵ月』(山と渓谷社)は、かつては人間の身近な存在だったと言われている魔女たちに伝わる、レシピや手仕事をつづった歳時記。イラストも見応えあり。

今回の先生:辻山 良雄さん

大学卒業後、大型書店「リブロ」に勤務。2016年1月に、カフェとギャラリーを併設した新刊書店「Title」を荻窪にオープン。「衣・食・住」の生活に寄り添った本を中心に、およそ1万冊を販売。
著書に、『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』(苦楽堂)や、1年を通し季節に合わせ365冊の本を紹介した『365日のほん』(河出書房新社)、画家のnakabanとの共著『ことばの生まれる風景』(ナナロク社)がある。

HP:http://www.title-books.com/

辻山 良雄さん 写真

プロフィール写真撮影:齋藤陽道

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