URくらしのカレッジ

これからのくらしを考える ひと×コミュニティ

みんながずっと生き生きと暮らせる仕組み。団地を拠点にした“ウェルフェア”って何?

愛着のあるまちで、生き生きと暮らしていきたい。多くの人が抱くこんな想いに応えようと、URが今、力を入れているのが、“ウェルフェア”という考え方を生かした新しいライフスタイルやまちづくり。具体的にどんなものなのか、URのウェルフェア研究室長である川上由里子さんに教えていただきました。

地域全体でお互いを支え合う社会へ。団地から始まる“ウェルフェア”

URウェルフェア研究室長 川上由里子さん
今、なぜ、“ウェルフェア”という新しい考え方が求められているのでしょうか?
川上
日本は少子高齢化が進み、現在の高齢化率は約27%。4人に1人が高齢者です。これからも高齢化はかなりのスピードで進み、約40年後には高齢化率は約38%になる(平成29年版高齢社会白書)と言われています。
高齢になれば、当然のことながら若いころと同じように何でも自分たちでできる、というわけにはいかなくなります。また一方で、子育て世代は少なくなってきており、育児で孤立感を深めている人も多くいらっしゃいます。つまり、国民の約半数が何かしらの困りごと、不安や不便を抱える社会になっていくということです。
戦後の日本は、個々の生活の豊かさを求めてきましたが、これからは“ウェルフェア”という地域全体でお互いに支え合ったり、助け合ったりできるようなコミュニティづくりが求められているのです。
団地で暮らすみなさんにどのようなコミュニティをつくってほしいと考えているのでしょうか?
川上
そうですね。高齢者だけではなく、若い世代、子育て世代、そして障害のある方も、多世代・多様な人々がゆるやかにつながり、交流できるコミュティをつくることが大切だと考えています。この、多様な世代が一緒に生き生きと暮らし続けられる住まい・まちのことを、「ミクストコミュニティ」と呼んでいます。個々が持つ優しさや強みというものを隣の人へ、そのまた隣の人へ、団地の人から地域の人へとちょっとずつつなげていけたら、元気に生活できるまちになるのではないかと思います。
地域全体で支え合いが必要になる近い将来に向けて、どんな体制を整えているのでしょうか?
川上
周りからのサポートを特に必要とする高齢者と子育て世代も安心して暮らせるように、まちづくりを考えています。具体的には、高齢者向けに住棟の一部をバリアフリー化したり、子育て支援施設を団地内につくったりなど、各世代のニーズに合わせて住居環境を整えています。
それとともに、地方公共団体や医療・福祉事業者、大学機関などと協力しながら、さまざまなサービスを提供できる体制も構築していきます。サービスは、医療、介護、子育て支援、生活支援、福祉など多方面にわたります。
URでは、2025年までに150の団地を地域関係者と連携・協力の拠点とする、「地域医療福祉拠点化」を目標に掲げているのですが、すでに多くの団地でさまざまなアクションが始まっています。ニーズに沿った環境が整っていけば、子育てのため、介護のためといった理由で必要に迫られ転居することもなく、住み慣れたまちで暮らし続けることができますよね。

ウェルフェアな社会へ① 誰もが健康に暮らせるまちづくり―豊明団地

すでに「地域医療福祉拠点化」に取り組んでいる団地の例を紹介しましょう。まずは、愛知県豊明市にある豊明団地。ここでは豊明市、藤田保健衛生大学、URが協力し、それぞれの強みを生かした活動や施設の運営、事業などが行われています。
その代表的なものが、藤田保健衛生大学が運営する「ふじたまちかど保健室」。大学の看護師や保健師、ケアマネジャーらが交代で保健室にスタンバイし、乳幼児から高齢者までの医療・介護・福祉などに関する相談に無料で応じてくれます。健康に関するミニ講座も毎日開催され、住民の健康づくりにも貢献しています。

また、学生が団地に住み、住民との交流や地域貢献の活動を行う「おとなりプロジェクト」も始動。“住民同士”という近い関係で、健康や暮らしの問題を共有し、サポートしています。
子育て支援事業としては、豊明市が開設した病後児保育室「えがお」が、団地だけでなく、豊明市の子育て世代を支える存在になっています。

ウェルフェアな社会へ② 多世代のミクストコミュニティを実現―男山団地

次に紹介するのは、京都府八幡市の男山団地。ここには、八幡市、関西大学、URが連携して開設したコミュニティスペース「だんだんテラス」があります。ここでは、男山地域まちづくりコーディネーターと関西大学の学生たちが運営を担当し、ラジオ体操、朝市、バーなどを随時開催。365日いつでもふらりと立ち寄れる場所として、子どもから高齢者までの多様な世代に親しまれています。

また、団地の集会所内に子育て支援施設「おひさまテラス」を設置し、ママ・パパが心豊かに暮らせるようなサポート体制も整えています。
このように住民同士の交流拠点をつくることで、多世代の交流を育むミクストコミュニティの活性化を推進しているのです。

子どもからシニア世代まで誰もが助け合い、安心して暮らしていける“ウェルフェア”を進めているUR。今後URくらしのカレッジでも、さまざまな団地の新しい取り組みを紹介していきたいと思います。

記事のまとめ

ウェルフェアとは、愛着のあるまちで誰もが生き生きと暮らし続けるための仕組み

  • ・少子高齢化に対応できる、 新しいライフスタイルやまちづくりが求められている
  • ・URのウェルフェアで力を入れているのが、多世代がゆるやかにつながりあう「ミクストコミュニティ」と、団地を地域の人々の連携や協力の拠点とする「地域医療福祉拠点化」
  • ・京都府の男山団地、愛知県の豊明団地など、各地のUR団地でウェルフェアへのアクションが始まっている

川上 由里子さん

UR都市機構 ウェルフェア総合戦略部ウェルフェア研究室長

ケアマネジャー、看護師、産業カウンセラー、福祉住環境コーディネーター2級。
大学病院、高齢者住宅などで13年間看護師として勤め、三井不動産株式会社にて高齢期の暮らしに関するケアデザインプラザの立ち上げに参画。現在は相談、講演、執筆、各企業の高齢者・介護関連のケアコンサルタントとしても活躍中。
2012年よりUR都市機構に在籍、ウェルフェア研究室長として職員をはじめとした人材の教育・育成に力を入れている。

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