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URPRESS 2017 vol.48 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス] URPRESS 2017 vol.48 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

復興の「今」を見に来て!第9回 - 高台の新たなまちの誕生に弾む心、高まる期待! 宮城県 東松島市

造成された野蒜ケ丘(野蒜北部丘陵地区)。3エリアに分かれ、すでに引き渡し済みの写真奥の西部・中央エリアには住宅が建ち始めている。
手前右側が野蒜駅前に広がる、2016年11月末に宅地の引き渡しが完了した東部エリア。

東北三県の24の自治体で復興まちづくりを支援しているUR都市機構。
支援のかたちや内容はさまざまだが、いずれも自治体と連携し、地元の人たちに寄り添いながら進めている。

奥松島を抱える風光明媚な宮城県東松島市。UR都市機構は、東日本大震災で7割以上の住宅が全半壊した東松島市と協力協定を結び、市内2地区の復興市街地整備と災害公営住宅の整備を支援している。すでに引き渡し済みの東矢本駅北地区に続き、2016(平成28)年11月には野蒜(のびる)ケ丘(野蒜北部丘陵地区)の最後の92区画を引き渡し、これにより野蒜ケ丘の278の宅地すべての引き渡しが完了した。東松島市にとっては、市内7つの防災集団移転促進事業のすべての宅地整備が完了したことになる。

そして11月20日、造成された広大な野蒜ケ丘を望むJR仙石線の野蒜駅の駅前広場で、「ひがしまつしま福幸まつり」が盛大に開かれた。

この日は野蒜ケ丘の宅地引き渡し式に加え、エリア間を結ぶ橋梁「野蒜ケ丘1号橋」と「野蒜駅連絡通路」の開通式、さらには「野蒜市民センター」と「東松島市奥松島観光物産交流センター」の開所式……と、お祝い続き。まつり会場には、新鮮な海や山の幸を並べた地元物産品の販売ブースなどが70以上も連なり、特設舞台では地元の小学生による「ふるさと宮野森太鼓」をはじめ、さまざまな演目が繰り広げられた。カキや地元の米粉団子入りの「だまこ汁」、樽酒、生海苔などもふるまわれ、子どももお年寄りも皆うれしそうだった。

式典で阿部秀保東松島市長は、大規模事業での新たなまちの誕生への喜びと期待を語るとともに、「国内外から物心両面にわたるご支援をいただき、再生と復興をなしとげることが恩返しだと思っています」と支援に対する感謝と、今後への決意を言葉にした。

東松島市と大船渡市でのUR都市機構の取り組みの詳細が紹介された『週刊新潮』掲載の「変わる日本の『暮らし』と『まち』」がWEBでご覧いただけます。
http://www.ur-net.go.jp/info/change/
野蒜ケ丘1号橋と野蒜駅連絡通路の開通を祝って、参加者みんなでハト形風船を青空に飛ばした。「ひがしまつしま福幸まつり」のオープニングとあわせ500個以上のハト形風船が舞い上がった。
ひがしまつしま福幸まつりには「八鷹(やつたか)みこし」も登場。右側に見える建物が野蒜市民センター。

「まちの元気と感謝の気持ちを集めて東松島市の復興をみんなで楽しもう!」と開催された、ひがしまつしま福幸まつり。
写真右上から時計回りに、蒸しガキのふるまい、鏡開き、大東文化大学全學應援團によるエールの演武、東松島市のマスコットキャラクター、イートくんとイーナちゃん。

「まちごと高台へ」その願いを叶える

野蒜ケ丘は、津波で浸水被害を受けた野蒜地域のまちの主要機能を丸ごと移転するために、山林を切り開いて造成した地。約91・5ヘクタールという東日本大震災の被災地の中でも最大級の高台移転先に、住宅はもとより、小学校や保育所、駐在所、消防署などが順次建設されている。JR仙石線の野蒜駅、東名(とうな)駅も地区内に移設されている。

そして、住民と行政が一体となって話し合いを重ね、まちづくりを進めてきたのが野蒜ケ丘の特徴だ。UR都市機構も計画段階から関わり、被災地復興や市街地整備などのノウハウを生かしながら事業の推進に尽力してきた。
山林の造成は難しいのではという意見も当初はあったが、特別名勝松島に指定されている野蒜地域ゆえ、海側から造成地が見えない造りにするなど、

景観に配慮。スピードを重視して高台へまちごと移転したいという地元の人々の願いを実現した。

「アップダウンのある地形の難工事なので、造成で出る大量の土砂を計画期間どおりに運搬できるかが大きな課題でしたが、ベルトコンベヤーと巨大重機の導入により、15カ月の予定だった期間を10カ月に短縮できました」

とUR都市機構東松島復興支援事務所所長 清水良祐は振り返る。巨大ベルトコンベヤーで1日に10トントラック1650台分の土砂を搬出したのだ。2012年4月の着任以来、一日でも早い完成をとの思いで奔走してきた清水にとっても、今回の引き渡し完了は感慨深い。

駅の南側エリアと高台をつなぐ歩行者の動線として、JR仙石線の高架下に配置された野蒜駅連絡通路。土砂搬出のためのベルトコンベヤーを通した設備を利用して造られた。
造成した野蒜ケ丘の地に立ち、さまざまな思いのこもった新たなまちの誕生に期待を寄せる、UR都市機構東松島復興支援事務所所長 清水良祐(左)と市街地整備課課長 亀山隆。

住民の夢と希望が詰まったまち

UR都市機構の亀山 隆市街地整備課課長は、地区の皆さんが前向きで、まちづくりに関して積極的に議論するのに驚き、背中を押されたという。

住民の要望をまとめて市に提言し、理想のまちづくりを進めてきたのは、主に野蒜北部丘陵振興協議会のメンバーだ。週に2~3回、夜に仮設住宅を順番に訪ねて住民の悩みや希望を聞き、要望をジャンルごとに整理して市に提出。UR都市機構も加わって検討して、「できる」「できない」あるいは「検討中」の回答を受け取る。「できない」場合はその理由も説明しながら、要望を出した人に必ず返答することを続けてきた。集まった要望は手すりの設置から集会所の仕様、街路樹や道路関連まで幅広く、500項目にも上ったという。「みんな悩みや心配がいっぱいあるし、仮設住宅でただ待っているのはつらいんです。お茶を飲みながら我々が悩みや希望を聞いてあげることがメンタルケアになる。そして要望への回答をきちんと伝えることが、待つ時間を埋めることにもつながるんです」

と語るのは、野蒜北部丘陵振興協議会会長の齊藤 均さん。その地道な活動に感嘆していると、「すごいのは、URの清水所長だよ。協議会の会合に毎回付き合って、住民の話に丁寧に耳を傾けてくれるんだから。

直接要望を聞いているから、判断も対応も早いしね。こんなに心のやさしい、人の気持ちを丁寧に扱ってくれる人はいない。本当に感謝しています」と齊藤さん。同協議会副会長であり、災害公営住宅部会長を務める齋藤剣一さんも、うなずきながら「清水所長は地区の小さな行事や祭りにも、地場のおみやげをもって必ず顔を出してくれる。土日や祝日、夜など自分の時間をつぶして付き合ってくれる。そんな清水さんとURさんを住民も信頼しているから、話し合いもスムーズに進みました」

互いの思いを伝え合いながら信頼関係を育み、進められてきた野蒜ケ丘のまちづくり。敷地内の災害公営住宅170戸の完成までも、あと少し。今年6~8月には入居できる予定だ。

地区内に仙台と石巻を結ぶJR仙石線の駅が2つあり、北側には三陸自動車道があるという交通の利便性がよい野蒜ケ丘。自然豊かで、お年寄りも子どもも安心して暮らせるまち、住民の皆さんの夢と希望が詰まったまちがいよいよ動き出した。高台移転のモデルとなるだろうこのまちの数年後の姿を早く見てみたい。

感慨深く宅地引き渡し式に臨んだ野蒜北部丘陵振興協議会会長の齊藤均さん(右)と、同副会長の齋藤剣一さん(左)。協議会の活動はボランティア。「5年、10年先を見据えて話をしましょう」と志高く、住民をまとめ引っ張ってきた。
隣接する東松島観光物流交流センターでは地場産品の販売や観光案内を行う。両施設とも県産の木材を使用している。
地域交流の拠点として野蒜駅前に誕生した野蒜市民センター

【妹尾和子=文、佐藤慎吾=撮影、福田正紀=ドローン撮影】

動画

復興の「今」を見に来て! 第9回 復興の「今」を見に来て! 宮城県 東松島市

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