街に、ルネッサンス UR都市機構

特集:団地の未来 「団地再生」から「未来のかたち」へ > 「人」と「空間」を生かして団地の価値を再発見する

URPRESS 2018 vol.46 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

「人」と「空間」を生かして団地の価値を再発見する

洋光台団地 横浜市磯子区

昭和40年代につくられた洋光台のまちで、今、世界的な建築家・隈研吾氏やクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を迎え、団地を核にした画期的な地域再生の取り組みが進められている。
題して「団地の未来プロジェクト」。このプロジェクトはなぜ行われ、何を目指すのか。まずは洋光台団地へと足を運んでみよう。

洋光台中央団地の広場に面した1階につくられた「CCラボ」。CCはCommunity Challangeの略で、月単位の長期利用が可能なロングラボと、1〜7日間の短期利用向けのショートラボの2室ある。写真はショートラボを利用中の「Art寺子屋」。

洋光台団地をモデルケースに

駅舎を出ると駅前のロータリーを見下ろすように建つ、UR都市機構の高層集合住宅が目に飛び込んでくる。洋光台のまちは、丘陵地を開発し、磯子止まりだったJR根岸線を延伸して、新しい駅を中心につくられた。

電車の運行と洋光台団地の入居が始まったのは1970(昭和45)年。駅の周りに高層の洋光台中央、徒歩5分ほどの場所に緑豊かな洋光台北・西の3団地3350戸があり、現在約1万800世帯が住むエリア全体の中でUR賃貸住宅の団地は大きな割合を占めている。

ここは横浜からJRで約20分と交通の便がよく、駅からも近く、UR都市機構の数ある団地の中でも利便性に恵まれている。しかし、それでも老朽化や時代に合わなくなった部分があり、少子高齢化の進行や商店街の活性化など、全国の団地が抱える問題は洋光台にも現れている。
「そこで団地の再生と活性化をはかるために2011(平成23)年にスタートさせたのが、『ルネッサンスin洋光台』です。全国に先駆けたモデルケースとして、UR都市機構が培ってきたノウハウを集めて取り組みました」

そう語るのはUR都市機構の東日本賃貸住宅本部洋光台団地マネージャー尾神充倫だ。ルネッサンスin洋光台では隈研吾氏や佐藤可士和氏、社会学者の上野千鶴子氏など6名の有識者からなる「アドバイザー会議」を設置し、5回にわたる集まりで、団地が抱える課題について意見を交換し、さまざまな提言を行った。成果は『団地のゆるさが都市(まち)を変える。』という本にまとめられ、その後の取り組みに生かされている。

一方で、地域住民とまちづくりの有識者や行政担当者による「エリア会議」も設け、地域住民主体のワークショップは、ほぼ月に1度のペースで開催された。多い時には100人、少ない時でも30人が参加したこのワークショップでは「駅前の活性化」と「多世代間交流・コミュニティーの活性化」について具体的な方策を話し合った。

いまある「資源」を生かす

「こうした中で見えてきたのは、ここには有効な資源があるということでした。それは『人』と『空間』です」

そこで、「人」という資源を発掘する場が設けられた。それが洋光台中央団地1階にできた「CCラボ」。コミュニティー活動に使えるおしゃれなこのスペースは、工芸体験やコミュニティーカフェなど多彩な活動のベースとなって、これまでに延べ69グループが使用し、稼働率は90%以上。利用者による会議も開かれ、コミュニティー活性化の話し合いの場としても機能している。さらにグループ間の連携を図り、地域と交流するためにハロウィンなどビッグイベントも実施。地域の行事への参加や「まちづくりワークショップ」の開催など活動は活発だ。「空間」という資源、つまり団地については、その魅力の向上を図り、時代に合わなくなった部分には新たな価値を与えて、新しい住まい方や地域のあり方を示していくことが再生の鍵。「すでに洋光台中央団地では隈さんのディレクションで外装に手を加えています」

尾神の説明に高層団地を見上げれば、外壁にアクセントとして縦ストライプの模様が描かれ、エアコンの室外機には特製の「木の葉パネル」があしらわれていた。微妙に色合いの異なるパネルがランダムに配置されていて、味気なくなりがちな外壁に、温かみを加えている。

洋光台中央団地の広場とアーケードを、立体的な空間に変身させる計画が進んでいる。
外壁に露出していた室外機置き場をアルミ製の「木の葉パネル」で覆う
外壁もリニューアル
洋光台団地マネージャーとして一連のプロジェクトを推進する尾神充倫。

目指すはプロジェクトの全国展開

昨年春には、取り組みをさらに深化させ具体的な形にしていくために、隈氏と佐藤氏をあらためて迎えて「団地の未来プロジェクト」が始動した。このプロジェクトのもと、ワークショップの提言を受けて隈氏がプランニングした洋光台中央団地広場の新しいアーケード建設などに向けた準備が進行中。また、「集まって住む未来」をテーマに募集した洋光台北団地集会所リニューアルのアイデアコンペには148件もの応募があり、その結果も今年6月に発表された。

さらに防災の新しい形を考えるワークショップをはじめ、CCラボの拡充、カーシェア、映画などの撮影を誘致するフィルムコミッション、佐藤氏と多彩な人材との対談など、8つの取り組みが進行中だ。

昭和40年代から50年代初めにつくられた団地を、UR都市機構はメインストックと呼び、その数は48万戸に及ぶ。ルネッサンスin洋光台から団地の未来プロジェクトへと続く取り組みは、築40年を過ぎたこれらの団地が抱える問題にどう対処し、団地というストックをどう活用していくか、未来を拓く道を探る壮大な試み。団地にとどまらず地域と連携し、団地を核とした地域活性化につなげるビジョンを持っていることも画期的だ。 「このプロジェクトは、この団地が50周年を迎える2020年、東京オリンピックが開かれる年でもありますが、そこをひとつの目途と考えています。ぜひ成功させて、全国に広げていきたい」

尾神の言葉が、この試みに託したUR都市機構の意気込みをもの語っている。

建築アイデアコンペが行われた洋光台北団地集会所の現状。リニューアル後は、多世代交流のためのコミュニティー拠点となることが期待されている。

【西上原三千代=文、青木登=撮影】

「人」と「空間」を生かして団地の価値を再発見する

昭和40年代につくられた洋光台のまちで、今、世界的な建築家・隈研吾氏やクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を迎え、団地を核にした画期的な地域再生の取り組みが進められている。

「集まって住む」
その力が未来を開く鍵になる

洋光台団地をモデルケースに始まった「団地の未来プロジェクト」。
そのキーマンである佐藤可士和さんに、このプロジェクトの目的や、実際に進めていくなかで感じている可能性などを伺った。

夢追う若者に無償で部屋貸します!

築50年、戸数1421の白鷺団地で、若者に住戸を提供して団地再生への道を開こうという試みが進められている。
「ワカモノ応援プロジェクト」と銘打った、そのユニークな取り組みとは?

団地に農場が誕生。
地域の人々が集う拠点に!

博多と小倉のほぼ中間に位置する宗像市の日の里団地。
その敷地内にこの春誕生した農場が、早くも地域活性化、多世代交流の場となり、注目を集めている。

UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

UR都市機構の情報誌[ユーアールプレス]の定期購読は無料です。
冊子は、URの営業センター、賃貸ショップ、本社、支社の窓口などで配布しています。

メニューを閉じる

メニューを閉じる

ページの先頭へ