街に、ルネッサンス UR都市機構

復興の「今」を見に来て!第5回 Part1

URPRESS 2015 vol.43 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

復興の「今」を見に来て!第5回 住民の潜在ニーズを引き出し理想のまちづくりに奔走! 気仙沼市(宮城県)Part1南郷住宅の入口で。住宅計画課課長の留目峰夫(左)と、災害公営住宅事業に当たる磯野雄人(右)。「入居者の引っ越しが完了して新たな生活が始まり、ほっとしています」

東北各地で、東日本大震災の復興支援に取り組むUR都市機構。
宮城県北東部の気仙沼市とは2012(平成24)年に協力協定を締結し6地区の災害公営住宅整備事業と2地区の復興市街地整備事業を担っている。

「被災者の需要に100%応える」という方針のもと、東北3県で最大規模の約2200戸の災害公営住宅の建設を計画している気仙沼市。UR都市機構はそのうちの6地区1033戸を担当。すでに完成して入居済みの2地区(南郷(なんごう)、四反田(したんだ))の住宅は、いずれも赤や青のアクセントが印象的な外観だ。10階建ての棟もあり、災害公営住宅としては珍しく高層。他の4地区も同様に高層棟で、一番高い棟は13階建てになるという。
「高層なのは、多数の入居希望者に、限られた土地で迅速に応えるための手段です。ベランダの手すりに変化をもたせたり、外壁にアクセントカラーを配すなどして圧迫感を軽減する工夫をしています」

UR都市機構気仙沼復興支援事務所住宅計画課課長の留目峰夫(とどめみねお)は、高層の理由とともに外壁の色についても説明を続けた。四反田住宅には空に溶け込むブルーを、南郷住宅は遠洋漁業が盛んなこの地で大事にされている大漁旗に使われる3色(赤、黄、青)を配すなど、設計段階からアクセントカラー選びにもこだわったという。

南郷住宅では集会所をイベント時に利用しやすいように庭と一体的な設計にするなど、住民の利便性にも配慮している。
「ここでの仕事は、自分たちが地元の人に求められていると強く感じることが多い」と語る留目は赴任して2年目。復興の手伝いにやりがいを実感する毎日だ。

気仙沼市観光キャラクター「海の子 ホヤぼーや」
南郷住宅は、南気仙沼小学校の跡地に建設。校門や校歌が彫られた石碑を残した。

“人が戻る魅力的なまち”をめざして

ハードだけでなくソフト支援にも力を入れています!42ヘクタールに及ぶ鹿折地区を見渡す市街地整備課主幹の日野智之(奥)と入社1年目の春野正成(手前)。
鹿折災害公営住宅の南に隣接する公園には、年配の方から要望の多かったグランドゴルフが楽しめる多目的広場を整備予定。

復興市街地整備では、鹿折(ししおり)と南気仙沼の2地区で、原則として海に近い商工業地を1・8メートル、奥の住宅地を鹿折は3メートル、南気仙沼は3・7メートル以上にかさ上げし、急ピッチで新たなまちづくりを進めている。区画整理事業によるハード整備に加え、ソフト支援にも力を入れているが、なかでも注目されているのが「鹿折・南気仙沼地区復興まちづくり事業者エントリー制度」だ。これは「土地を貸したり売ったりすることを望む地権者」と「この地域で事業展開を希望する事業者」を結びつける役割をUR都市機構が担うもの。復興事業では初の試みだ。
「事前に地権者の意向を確認したら、すでに別の地で生活しているなどの事情で地権者の約3割が元の土地に戻る予定のないことがわかりました。空き地が点在してはもったいない。その方たちの土地を活用すればスーパーやコンビニなど事業者の誘致が進み、まちの活性につながると思ったのです」 とUR都市機構気仙沼復興支援事務所市街地整備課主幹の日野智之は制度の目的を説明する。個人では難しい事業者の誘致などをUR都市機構が請け負うことで、土地の有効活用と復興の迅速化に貢献しているのだ。

また、住民の意見やニーズに丁寧に応えながらのまちづくりの推進も徹底。
「鹿折の公園づくりワークショップでは中学生から『2人で歩くと距離がだんだん縮まる(幅が狭くなる)”青春の道”が欲しい』という意見が出ました」

その初々しい要望に衝撃を受けたという日野は、それならと芝生の広場をハート形にする案も加えて提案し、生徒たちに喜ばれた。「東北の人のために何かできれば」と志願して気仙沼に来た日野にとって、復興支援の現場は阪神・淡路大震災後に赴任した芦屋に続く2カ所目。新入社員だった当時と今とでは求められる役割が異なるものの、地元の人の声に真摯に耳を傾ける基本姿勢は変わらない。
「東北の人は遠慮がちなので、なるべくこちらから意見を聞く機会を増やし、気持ちに寄り添うようにしています」
と語る日野に「苦労は?」と質問すると、「それが特になくて。食べ物は美味しいし、いろいろな人と知り会えるのが楽しくて」と明るく力強い答えが返ってきた。
相手を理解しようと努め、誠実な仕事で地元の人々との信頼関係を築いてきたUR都市機構気仙沼支援事務所のメンバーは、一日も早い復興を目指して、今日も元気に奔走している。

市街地整備が進む南気仙沼(内の脇)地区。32.5ヘクタールの敷地内の2カ所で災害公営住宅の建設も進められている。市街地整備が進む南気仙沼(内の脇)地区。
32.5ヘクタールの敷地内の2カ所で災害公営住宅の建設も進められている。
四反田住宅は10階建て全70戸。空に溶け込むブルーをアクセントに配した。

気仙沼市の復興事業の動き

気仙沼市へ

宮城県の北東端に位置し、岩手県の一関市や陸前高田市に接する気仙沼は、水産加工業で栄えてきたまち。遠洋漁業も盛んで、四季折々、極上の海の幸が味わえる。
アクセスは、気仙沼駅まで東北新幹線・一ノ関駅から車または列車(大船渡線)で約1時間20分。気仙沼駅前観光案内所ではレンタサイクルを受け付けている(有料)。

復興の進捗状況などUR都市機構の活動を写真とともに詳しく紹介している「まちづくり情報館」。市街地整備が進む南気仙沼と鹿折の2つの地域にそれぞれ設置されている。

観光ガイド

三陸復興国立公園の南端にあり、半島や入り江など変化に富んだリアス式海岸の景観美が楽しめる。気仙沼湾に浮かび、「緑の真珠」と呼ばれる周囲24kmの大島までは気仙沼港からフェリーで25分。大島の亀山山頂からはリアス海岸の大パノラマを一望できる。

気仙沼市の観光・物産などの問合せ

気仙沼観光コンベンション協会
TEL:0226-22-4560

気仙沼市の人気キャラクター「ほやボーヤ」気仙沼市の人気キャラクター「海の子 ほやボーヤ」。ほやのアタマにホタテのベルト、サメの皮のマントを羽織り、手にサンマの剣をもってキメている!
気仙沼へ

復興の「今」バックナンバー

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