街に、ルネッサンス UR都市機構

復興の「今」を見に来て!第2回 Part2

URPRESS 2014 vol.39 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

復興の「今」を見に来て!第2回盛土の上に、復興のシンボル下和野団地が完成

UR都市機構は、陸前高田市と2012年3月に協力協定を締結し、復興まちづくりを推進している。全体としては津波による浸水を免れるための高さの確保(盛土によるかさ上げ)を行い、山側にシフトしたコンパクトな市街地を新たに形成する計画。復興市街地整備事業2地区、災害公営住宅4地区の業務全般、総合整備をURが担っている。

コミュニティー形成に配慮した集合住宅が完成しました

陸前高田の中心市街地に近い高台に、この秋に完成した災害公営住宅「下和野(しもわの)団地」が注目を集めている。UR都市機構が手がけた大規模集合住宅で、まちの復興のシンボルになっている。10月から入居がスタートした下和野団地を穏やかな表情で見つめるのは、UR陸前高田復興支援事務所の小林章だ。

震災発生直後の2011年4月に派遣されて以来、地縁血縁のないこの地で復興に尽力してきた小林にとって、市の災害公営住宅第1号である下和野団地の完成は喜びもひとしおだ。

赴任当初は、被災された方々を訪ね歩いてヒアリングする浸水被害調査からスタート。その後、行政と連携しながら復興計画を作成、災害公営住宅の建築現場をまとめてきた。
試験的に先行して盛土した地に建設した下和野団地の設計にあたっては、「近くに商店があると便利」という住民の声や、「伝統の寄棟屋根の雰囲気を残してほしい」といった行政の希望を踏まえながら、UR都市機構ならではのノウハウや工夫、配慮を随所にちりばめた。

陸前高田には、大変な状況でも明るくふるまう気丈な人が多くて助けられたと語る小林だが、自身も仕事上での苦労はほとんど口にしない。赴任から3年半、途中で帰りたいと思ったことはないという。

「私の役目は、地域住民に寄り添った住まいづくり。市の意向を十分に理解して計画・設計に反映させることが重要です。骨を埋める覚悟ですから」と静かに語る小林から、仕事への責任感、そして矜持が伝わってくる。

UR陸前高田復興支援事務所の小林章。 UR陸前高田復興支援事務所の小林章。 下和野団地には、公団住宅一筋の40年間に培ってきたUR都市機構のノウハウを盛り込んだ。

下和野団地 設計のポイント

1.復興のシンボルとなる建物

この地で伝統的な寄棟や入母屋住宅の雰囲気を継承しつつ、南棟と北棟をつなぐ立体的な設計に。

2.住棟をつなぐ回廊を2階に

歩車分離されている2階部分に回廊を設けて避難路を確保。
あわせてミニコモンスペースを屋内外それぞれに設置し、居住者の憩い、交流の場とした。

ミニコモンスペースを屋内外それぞれに設置し、居住者の憩い、交流の場とした。

3.南棟最上階に設けた集会室

コミュニティの核となる集会室を、南棟の最上階 (6階)に配置。緊急時に100人程度が避難できるスペースを確保し、太陽光利用による電力供給システムも導入。

4.1階に店舗・福祉施設を設置

にぎわい創出、居住者の利便性の向上および商業者の生活再建を図ることを目的に、南棟1階部分に店舗・福祉施設が入居できる6区画を設置。
このほか、見守りに配慮して、共用廊下に室内の明かりが漏れる工夫もされている。

新たなまちづくりに向けて日々奔走中!

陸前高田の復興まちづくりは、岩手県内最大規模。被災した旧市街地を平均7~8メートルかさ上げするという工事であり、必要な土砂も膨大だ。そこで活躍しているのが、幅1・8m、総延長約3kmの巨大なベルトコンベヤーだ。今年7月から全区間で稼働し始め、ベルトコンベヤーが山から旧市街地へと延びる光景は、世界中から注目の的になっている。

このベルトコンベヤーは大量の土砂を安全かつ迅速に、環境に配慮して搬送できるのが特徴。驚くのはその搬送能力で、1日8時間稼働した場合、約2万m³、10トンダンプカー4000台相当の土砂が搬送可能。それだけのダンプがまちなかを走った場合のことを考えると、いかに渋滞緩和や環境、安全面への配慮、工事期間の短縮に貢献しているかがわかる。

かさ上げ地域で建築工事に着手できるのは、早いところで2015年半ばの予定。その目標に向けて懸命な作業が続けられているが、必要な土地の使用許可は2000人規模。 その地道な作業の終盤を担っているのは、UR陸前高田復興支援事務所の綿谷光城(みつしろ)と西村大(だい)だ。通常のニュータウン開発では、計画がある程度固まってから土地を整備するという流れだが、復興現場ではスピードを重視して同時並行。

盛土工事の進捗状況を確認する、陸前高田復興支援事務所基盤工事課の綿谷光城(右)と西村大(左)。 ベルトコンベヤーのはき出し口は5カ所。 そのひとつを背に、盛土工事の進捗状況を確認する、陸前高田復興支援事務所基盤工事課の綿谷光城(右)と西村大(左)だ。
「希望のかけ橋」と呼ばれるベルトコンベヤーが、川を渡り旧市街地に向かって延びている。
「動く歩道」と間違う人も多いとか。山から削り出した土砂や岩を30cm以下まで破砕して搬送。日々、大量の土砂が積み上げられている。

「被災された方が1日も早く住宅に入れるように、工事がスムーズに進むように、住民のご理解、ご協力を得るための調整、地固めを進めています」と語る綿谷のモットーは、「変化に柔軟に」。打たれ強さを武器に、円滑に工事を進められるよう関係者との調整に奔走している。

また、東北大学在学中に東日本大震災を経験した西村は、東北のために役立つ仕事を志願して入社。3年目の今春、念願かなってこの地へ配属に。工事の規模の大きさに驚きつつも、やりがいを感じる日々だという。一日も早い復興へ、という共通の思いを胸に、UR都市機構職員の奮闘が続いている。

【妹尾和子=文、青木登=撮影】

広島土砂災害地域への支援

8月に広島市で発生した土砂災害で被害を受けられた皆さまに心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧を心からお祈り申し上げます。
UR都市機構では、被災された方の一時避難先として、広島市内のUR賃貸住宅を提供しています。

動画

盛土の上に、復興のシンボル 下和野団地が完成
岩手県陸前高田市の復興まちづくり

盛土の上に、復興のシンボル 下和野団地が完成

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