根岸三丁目地区プロジェクト 台東区に位置する根岸三丁目地区は、古い木造住宅や寺院が建ち並ぶ地域です。戦災を免れたため、昔ながらの下町情緒が残る反面、老朽木造住宅が多く、戦災復興の区画整理による基盤整備がなされておらず、狭隘道路が多いなどの防災上の課題を抱えていました。台東区とUR都市機構が協働で進めた密集市街地整備事業の特徴やスキームは、どのようなものだったのでしょうか。事業に携わったお二人にお話を伺いました。

  • 施行前の地区状況
  • 課題の解決に向けて
  • 事業を完了して
  • プロジェクト概要
UR都市機構 小松原 茂(こまつばら・しげる)
東日本都市再生本部 密集事業総括マネージャー 密集市街地整備第1チーム 主査
平成21年6月から現在まで、主に事業総括に携わる。
UR都市機構 小松原茂×台東区 佐藤浩一氏
台東区 佐藤 浩一(さとう・こういち)氏
台東区役所 都市づくり部 地区整備課 担当係長
平成22年4月から現在まで、主に事業総括、庁内調整に携わる。

事業施行前の地区状況

行き止まり道路の解消と、借家人の受け皿が課題。

佐藤氏 佐藤氏台東区では平成14年度から密集市街地整備事業を積極的に行っています。平成15年に防災広場及び通り抜け通路の用地、また事業用代替地として、廃院となった病院の土地を取得しました。平成17年には防災広場を整備しましたが、大きな課題が残りました。それは、防災広場と通り抜け通路に接続する防災区画道路B路線(南区間)の状況です。B路線は道幅が2.7メートル程度と狭いうえ、南側が行き止まりになっており、依然として防災上の課題が残っている状況にありました。B路線の行き止まりの解消と拡幅が、当地区の防災性を向上させる上での最重要課題だったのです。とはいえ、沿道には老朽化した木造住宅があり、高齢の借家人が30名ほど住んでおり、その方々の移転先をどのようにして確保するか区単独の力だけで進めることは難しい状況でした。そこで、密集市街地整備のノウハウをもつUR都市機構に相談しました。

UR小松原 UR小松原平成18年に「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」が改正され、UR都市機構は地方公共団体からの要請を受けて従前居住者用賃貸住宅の整備ができるようになりました。台東区から相談を受けた頃は、UR都市機構としても密集市街地整備事業を強化していこうとしていた矢先でした。また、他地区の密集市街地の解消にあたり、土地区画整理事業を導入した先例があり、まさに絶好のタイミングであったといえます。

インタビューの様子 佐藤氏UR都市機構に支援をいただくことになりましたが、密集市街地整備事業の主体はあくまで台東区になりますので、道路事業は区施行で進めました。また、B路線の課題解決にはUR都市機構の提案を受け土地区画整理事業を採用しました。事業地区の一部に台東区も土地を所有していたため、地権者である台東区が施行者となるのは中立性の観点から、ふさわしくありませんでした。そこで、UR都市機構に土地区画整理事業の施行とB路線整備をお願いし、土地の入れ替えや権利者との調整を受け持ってもらいました。

課題の解決に向けて

従前借家人が安心できる場所に新たな従前居住者用賃貸住宅を確保。

佐藤氏 佐藤氏UR都市機構へ協力要請をする以前は、地区内に住まわれていた借家人の皆様は、事業により長年住み慣れた街を離れることへの不安を抱いていました。台東区は区営住宅を所有しておらず、区内にある数少ない都営住宅は空きがほとんどない状況でした。当時は借家人の皆様に、「駅前などにある不動産屋で、自分で転居先を探して下さい」と説明しなければならず、事業に対してご理解を得られる状況にありませんでした。
UR都市機構は先述の法改正により、地方公共団体の要請に基づき従前居住者用賃貸住宅を整備することができるようになりましたので、事業地区内に借家人の方々の転居先となる従前居住者用賃貸住宅を整備いただくよう要請しました。これにより、当地区が抱えていた課題が一気に解決されました。

UR小松原 UR小松原従前居住者用賃貸住宅が地区内に建つのであれば、借家人は生活圏を変えることなく、生活を続けることができます。なかには、住まいが変わること自体に抵抗を感じていた人もいましたが、日々、賃貸住宅ができ上がっていく過程を見ているうち、不安な気持ちが解消していったようです。

B路線の整備で防災性・利便性が向上。安心感のある生活道路に。

インタビューの様子 佐藤氏平成23年に従前居住者用のUR賃貸住宅「コンフォール根岸」が完成し、借家人のほとんどの方が移り住みました。従前の住まいにはお風呂がなく、中にはトイレも共同の築50年以上経ったアパートだったこともあり、今の住まいは快適で住み心地がよいと喜んでいただいています。また、B路線の道幅を広げ、行き止まりを解消したことで利便性が向上しました。これまでこの地域に住んでいた方は、駅へ行くにも迂回しなければなりませんでしたが、その必要がなくなりました。また、手押し車を利用している高齢者の方であっても無理なく通行できる道幅が確保できました。ウォーキングや犬の散歩で利用している人も多いですし、住民の皆さんから喜びの声をいただいています。

UR小松原この地域はご高齢の方が多く、なかには介護が必要な方もいます。以前の道路は幅が狭く行き止まりだったため、緊急車両はおろかデイサービスのお迎えなど、介護車両も進入できませんでした。今では、自宅の前まで介護車両が来てくれるようになったので助かっているという声も聞きます。また、万が一の時は、消防車や救急車といった緊急車両も入れるので安心感があると思います。

事業を完了して

台東区とUR都市機構が手を携え、事業をスムーズに推進。

事業完了後の様子 UR小松原本事業では、従前居住者用賃貸住宅の整備や、事業のスキームをつくる業務を担ったほか、借家人交渉のお手伝いもしました。UR都市機構は一般の人への認知度が低く、地域の人とお話をするときに、どのような組織なのか理解してもらうのに時間がかかることがありました。本事業では、台東区と協働することで地権者や借家人から信頼を得ることができ、スムーズに業務が進められました。また、台東区内の関係部署には佐藤さんが精力的に調整していただきました。台東区とUR都市機構がお互いの信頼関係の下、タッグを組んで一緒にやれたことが、事業が成功した大きな要因だと思います。

インタビューの様子 佐藤氏従前居住者用賃貸住宅を地区内に建てられたこと、そして、B路線の課題を解決できたことは、UR都市機構の協力がなければ難しかったと思います。お陰さまで、ほかの区からはもちろん、九州など遠方の地方公共団体からも先進事例として視察が来ています。今後の密集市街地整備事業のモデルケースになりうる地区だと思います。

UR小松原本事業は決して大きな事業ではありませんが、地区特有の課題に対して的確に従前居住者用賃貸住宅や区画整理という「道具」を提供することができました。最後まで台東区と手を携えながら事業をスムーズに短期間で推進できましたし、住民の皆さんとしっかり向き合って進められた事業だったと思っています。

今後の密集市街地整備事業にもUR都市機構の活躍に期待。

事業完了後の様子 佐藤氏当地区は、地権者も借家人も協力的な方が多く助けられましたし、皆さんが幸せになれる計画を立てられて本当によかったです。UR都市機構は、まちづくりのノウハウが豊富ですし、確かな実績があります。震災復興などでも活躍されていますが、これからも全国的にノウハウを発揮して、密集市街地の解消に向けて活躍してほしいと思います。

UR小松原東京都では首都直下型地震の切迫性などから、木密地域の解消を目的として「木密地域不燃化10年プロジェクト」が進められています。UR都市機構としても力を入れていきますし、地方公共団体のまちづくりにできる限りの支援をさせていただければと思っています。

根岸三丁目地区プロジェクト プロジェクト概要
押上・業平橋駅周辺地区プロジェクト プロジェクト名 根岸三丁目地区プロジェクト 事業の目的

土地区画整理事業と従前居住者用賃貸住宅を活用した避難路ネットワークの整備

  1. 所在地

    東京都台東区

  2. 区域面積

    約0.3ha(土地区画整理事業施行区域)

  3. 用途地域等

    第一種住居地域
    容積率300%、建ぺい率60%
    準防火地域、第3種高度地区

  1. 事業手法及び施行者

    住宅市街地総合整備事業(台東区)、従前居住者用賃貸住宅整備(UR都市機構) 、防災区画道路B路線整備(台東区からUR都市機構が受託) 、土地区画整理事業(UR都市機構による個人施行)

  2. 権利者数

    4名(土地所有者)

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